ぺてん師と空気男(江戸川乱歩)の超あらすじとネタバレ

この記事では、江戸川乱歩の名作『ぺてん師と空気男』のあらすじとネタバレを詳しく紹介します。探偵小説の巨匠として知られる乱歩が描くこの物語は、主人公「空気男」が不思議な男、伊藤錬太郎との出会いをきっかけに、プラクティカルジョーク(人を驚かせるいたずら)の世界に引き込まれるところから始まります。

物語は、巧妙なジョークと複雑な人間関係、そして戦争の影響を背景に展開し、読者を最後まで飽きさせません。これから『ぺてん師と空気男』の各章を順に解説し、その魅力と驚愕の結末に迫ります。江戸川乱歩の巧みなストーリーテリングと独特の世界観を堪能してください。

この記事のポイント
  • 主人公「空気男」と伊藤錬太郎の出会いとその背景
  • プラクティカルジョークの詳細とその実例
  • 空気男と伊藤の妻・美耶子との関係と展開
  • 伊藤の失踪と戦争の影響
  • 物語の結末と伊藤の最終的な計画

ぺてん師と空気男(江戸川乱歩)の超あらすじとネタバレ

章1: 不思議な男との出会い

主人公の「わたし」、通称「空気男」は、ある日、列車に乗っているときに、とても不思議な男に出会いました。その男は白紙の本を読んでいましたが、そこには何も書かれていませんでした。興味を引かれた空気男は、その男に近寄って話しかけてみました。

その男は耳からかけた黒い紐を口にくわえていました。空気男は不思議に思い、何をしているのかと尋ねました。すると、その男は「柑橘類の胃液に及ぼす実験をしている」と答えました。そして「キンカンしか食べていない。あとから胃液を採取するのだ」と続けました。空気男はますます興味を引かれました。

さらに、先ほど男が読んでいた白紙の本についても質問しました。すると男はその本を手渡してくれました。空気男がその本を開くと、そこにはきちんと文字が印刷されていました。実は、その男は手品師で、白紙の本と印刷された本の2冊を使って、周囲の人を驚かせていたのです。

空気男は、その男に興味を抑えられず、彼の後を尾行することにしました。しかし、尾行はすぐにばれてしまい、男に声をかけられました。男は空気男を宿へと招待しました。その男の名前は伊藤錬太郎といいました。彼は「プラクティカルジョーク」という、人を驚かせるいたずらを愛好している人物でした。

黒い紐も、白紙の本も、すべてはプラクティカルジョークの一部だったのです。空気男はその話を聞いて、ますます伊藤錬太郎に興味を持ちました。そして、自分も「プラクティカルジョーク」というものに心を奪われるようになりました。

こうして、空気男は不思議な男との出会いを通じて、新しい世界に足を踏み入れることになったのです。

章2: プラクティカルジョークの魅力

空気男と伊藤錬太郎は、出会った後すぐに親しくなり、頻繁に会うようになりました。二人とも探偵小説が好きで、お互いに特に仕事もしていなかったため、気が合ったのです。また、空気男は伊藤の妻である美耶子に淡い恋心を抱いていましたが、何よりも空気男は「プラクティカルジョーク」に魅了されていました。

伊藤と空気男は、よく一緒に街へ出かけ、見知らぬ人々にプラクティカルジョークを仕掛けました。例えば、ある日二人は金物屋に行きました。伊藤は店員に「本がほしい」と伝えました。店員は驚いて「ここは金物屋です」と答えましたが、伊藤は「それは知っています。でも本がほしいのです」と続けました。店員は困惑し、店主を呼びに行きました。その時、伊藤は「果物用の小さいフォークがほしいと言っているのですが」と話を変えました。店員と店主は呆然としましたが、これはすべて伊藤のプラクティカルジョークだったのです。

このようにして、伊藤と空気男は日々さまざまなプラクティカルジョークを楽しんでいました。空気男は、周囲の人々を驚かせることで得られる楽しさとスリルにすっかり夢中になっていました。伊藤は常に新しいジョークを考え出し、それを実行するたびに空気男はその才能に感心しました。

また、伊藤は自分の家でもプラクティカルジョークを行いました。ある日、空気男が伊藤の家を訪れたとき、伊藤は「今日は特別なジョークを見せてあげる」と言いました。彼は空気男を地下室に連れて行きました。そこには何もありませんでしたが、突然照明が消え、真っ暗になりました。空気男は驚きましたが、すぐに伊藤の笑い声が聞こえ、照明が戻りました。実は、これは伊藤が用意した驚かせるための仕掛けだったのです。

空気男はこのような日々を過ごす中で、伊藤のプラクティカルジョークに対する情熱と創造力にますます感銘を受けるようになりました。そして、自分もまたその一員として、伊藤とともにプラクティカルジョークを楽しむ日々を送ることに満足していました。

章3: 空気男と美耶子の恋

伊藤錬太郎と空気男は、プラクティカルジョークを通じてどんどん親しくなっていきました。その一方で、空気男と伊藤の妻である美耶子もまた親しくなっていきました。空気男は、美耶子に対して恋心を抱くようになり、二人は密かに会うようになりました。

伊藤が出かけるときには、空気男と美耶子はまるで恋人のように過ごしました。しかし、そんな時でも二人は常にどこかで伊藤の気配を感じることがありました。まるで伊藤が二人を見張っているかのような感じがしたのです。

ある日、伊藤が神戸へと旅立つことになりました。そのタイミングで、美耶子は空気男の住む部屋を訪れました。二人は互いの気持ちについて初めてはっきりと話し合いました。美耶子は空気男に対して、夫である伊藤のもとから離れたいと告げました。空気男もまた、美耶子と一緒にいたいという強い気持ちを持っていました。

その夜、空気男は美耶子と一緒に過ごし、幸せな時間を共有しました。しかし、その幸せは長く続きませんでした。突然、部屋のドアが開き、そこには伊藤が立っていたのです。伊藤は無言のまま美耶子を連れて帰りました。空気男は驚きと恐怖で動けませんでした。

翌日、ジョーカークラブの会長である酒巻から電話がかかってきました。酒巻は「美耶子には手を出さないように」と強く注意しました。さらに数日後、酒巻は空気男に「美耶子の姿が見えない、彼女は閉じ込められているらしい」と伝えました。

美耶子の身を案じた空気男は、伊藤の家を訪ねることにしました。家に着くと、伊藤は地下室で何かをセメントで埋めていました。空気男は美耶子が埋められているのではないかと恐れ、焦って掘り返そうとしました。しかし、そこにあったのはただの人形でした。美耶子は無事でした。これもまた伊藤のプラクティカルジョークの一つだったのです。

この出来事により、空気男はますます伊藤のジョークの深さと計画性に驚かされました。そして、自分が伊藤の手のひらで踊らされていることに気付きながらも、伊藤の才能に対する尊敬の念を抱きました。

章4: 伊藤の失踪と戦争の影

美耶子を巻き込んだプラクティカルジョークの一件をきっかけに、空気男は伊藤錬太郎との関係に距離を置くようになりました。伊藤の行動に不安を感じた空気男は、彼との接触を避けるようにしました。しかし、事態はさらに不穏な方向へと進みます。

それから約2か月後、伊藤は突然、家を売って引っ越してしまいました。空気男は伊藤の行方が分からなくなりました。彼がどこに行ったのか、何をしているのか全く手がかりがありませんでした。美耶子のことも心配になった空気男は、かつての事件の真相を確かめるために伊藤の旧宅を訪れました。床下を掘り返してみたものの、そこには何もありませんでした。美耶子は無事だったのか、それとも別の場所に隠されているのか、空気男には知る術がありませんでした。

そんな中、戦争が始まりました。空気男もまた、戦争の混乱に巻き込まれました。戦争が終わり、終戦後の混乱が収まると、空気男は再び上京し、三流新聞の記者となりました。戦後の荒れ果てた東京で、新たな生活を始めることになりました。

ある日、空気男は社会部長から命令を受けました。最近話題となっている「宇宙神秘教」という新興宗教について調査するように言われたのです。空気男は、その宗教団体の本部を訪れ、教主に面会することになりました。

教主に対面した瞬間、空気男は驚きました。そこにいたのは、伊藤錬太郎と美耶子だったのです。二人は戦争の混乱を逃れ、この新興宗教のリーダーとして新たな生活を送っていたのです。空気男は別室に通され、伊藤と話をすることになりました。

驚きと困惑の中で、空気男は伊藤に問いかけました。「どうしてこんなことを?」伊藤は冷静に答えました。「あれは自分にとって一世一代のジョークだったのだ。しかし、戦争という大きな出来事がそれをかき消してしまった。もし戦争がなければ、あのジョークで世間全体を驚かせられたのに」と悔しそうに話しました。

出会った直後から、伊藤がこの大規模なプラクティカルジョークの計画を練っていたことを知り、空気男は驚きと同時に、伊藤の才能に対する尊敬の念を抱きました。しかし、自分がその一部として利用されたことに、悲しみと憐れみの気持ちを感じるのでした。

章5: プラクティカルジョークの最終章

空気男は、伊藤錬太郎と再会したことで心に複雑な感情を抱えました。伊藤と美耶子が新興宗教「宇宙神秘教」のリーダーとなっている事実を知り、驚きを隠せませんでした。伊藤に導かれて別室に通された空気男は、久しぶりに伊藤と話すことになりました。

伊藤は、空気男の驚きを楽しむかのように微笑んでいました。空気男が「どうしてこんなことをしたのか?」と問いかけると、伊藤は穏やかに話し始めました。「君と美耶子の関係があそこまで進むとは思わなかったが、あれは自分にとって一世一代のジョークだったんだ」と言いました。空気男はその言葉に困惑しながらも、伊藤の話を続けて聞きました。

伊藤は、戦争が始まる前からこのジョークを計画していたと言いました。「戦争という大きな出来事がなければ、あのジョークで世間全体を驚かせられたのに」と伊藤は悔しそうに言いました。伊藤の目には、その計画がどれほど精緻で計画的だったかが映し出されていました。

空気男は、伊藤の話を聞くうちに、彼の才能と執念に対する尊敬の念を抱く一方で、自分がそのジョークの一部として利用されたことに対する悲しみと憐れみの気持ちも感じました。伊藤のプラクティカルジョークは、単なるいたずらではなく、彼の人生そのものだったのです。

その後、空気男は新聞社に戻り、伊藤と美耶子に関する記事を書きました。記事は大きな反響を呼び、「宇宙神秘教」の存在が広く知られることとなりました。しかし、空気男の心には、伊藤との奇妙な友情と、その結末に対する複雑な感情が残りました。

空気男は、自分が経験した数々のプラクティカルジョークを思い返し、伊藤錬太郎という人物の異常なまでの創造力と執念深さを再認識しました。伊藤との出会いが自分の人生にどれほどの影響を与えたかを思いながら、空気男は新たな日常に戻っていきました。

伊藤錬太郎のプラクティカルジョークは、空気男にとって忘れられない出来事となりました。そして、そのジョークがどれほど深く計画されていたかを知ったことで、空気男は自分の人生にも新たな視点を持つようになったのです。

ぺてん師と空気男(江戸川乱歩)の感想・レビュー

『ぺてん師と空気男』は、江戸川乱歩の独特な世界観とストーリーテリングが光る作品です。物語は、主人公である「空気男」が不思議な男・伊藤錬太郎と出会うところから始まります。伊藤は「プラクティカルジョーク」という、人を驚かせるいたずらを愛好しており、その巧妙なジョークに空気男は魅了されます。

空気男は、伊藤とともにさまざまなジョークを楽しむうちに、彼の妻である美耶子と親しくなります。この関係は緊張感を生み、読者を引き込む要素となっています。美耶子との秘密の関係が明るみに出ることで、物語は一気に緊張感を増します。

戦争という背景も、この物語に深みを与えています。伊藤が突然姿を消し、戦争が二人の関係に大きな影響を与える展開は、時代背景を巧みに取り入れたものです。戦後、再び伊藤と出会う場面では、彼の壮大な計画が明らかになり、読者に大きな衝撃を与えます。

この作品の魅力は、何と言ってもその予測不能な展開と巧妙なプロットにあります。伊藤のジョークの一つ一つが精巧に作られており、読者は常に先を読みたくなるような工夫がされています。空気男の視点から描かれる物語は、彼の感情や葛藤がリアルに伝わってきます。

全体を通じて、江戸川乱歩の卓越した筆致と物語の構成力が際立っており、読者を飽きさせることなく引き込む力があります。中学生でも楽しめる平易な表現ながらも、深いテーマと複雑な人間関係が描かれており、読み応えのある一作です。『ぺてん師と空気男』は、乱歩のファンのみならず、ミステリー小説好きのすべての人におすすめできる作品です。

まとめ:ぺてん師と空気男(江戸川乱歩)の超あらすじとネタバレ

上記をまとめます。

  • 主人公「空気男」と不思議な男・伊藤錬太郎の出会い
  • 伊藤錬太郎のプラクティカルジョークの説明
  • 空気男がプラクティカルジョークに魅了される過程
  • 伊藤と空気男の友情の発展
  • 伊藤の妻・美耶子との秘密の関係
  • 美耶子と空気男の密会が伊藤に発覚する
  • 伊藤のジョークによる美耶子の行方不明事件
  • 戦争による二人の分断と伊藤の失踪
  • 終戦後の再会と「宇宙神秘教」の実態
  • 伊藤の壮大なジョーク計画とその結末