有川浩の小説「フリーター、家を買う」は、家族の絆と成長を描いた感動的な物語です。
主人公の誠治は、仕事を辞めた後、母親の病気や家族の問題に直面します。彼は再就職し、家を買うことを決意し、家族のために奮闘します。
この記事では、物語の魅力や感想をネタバレを含みながら紹介します。読者は誠治の成長や家族の絆に感動し、物語の素晴らしさを堪能することでしょう。
- 主人公の誠治が家族のために再就職し、家を買うことを決意する過程が理解できる。
- 誠治が母親の精神疾患と家族の問題に直面し、それにどのように対処するかが分かる。
- 誠治が再就職活動をする中で、家族のサポートや団結の重要性が示される。
- 誠治の成長や家族との絆が物語の中で描かれ、読者は感動や共感を味わうことができる。
- 誠治の家を買うための奮闘や、新しい生活への希望が物語の中で描かれる。
有川浩「フリーター、家を買う」の超あらすじ(ネタバレあり)
誠治は、3か月で仕事を辞めてしまい、無職の状態になっていました。毎日実家でふらふらと過ごしていると、母親の様子がなんだかおかしいことに気付きました。母親はふらふらと体を揺らし、被害妄想のようなことを繰り返し言うようになったのです。
誠治は心配になり、姉と一緒に母を病院に連れて行きました。すると、医師から「うつ病と精神病を併発しています」と診断されました。誠治は驚きましたが、姉によると、母は昔から近所の人にいじめられていたというのです。
誠治はその話を聞いて驚きましたが、姉は続けて説明しました。家族が今の町に引っ越してきたばかりのころ、父親が近所の人との飲み会で無神経な発言をしてしまったそうです。それが原因で、家族は近所の人たちから嫌がらせを受けるようになりました。特に母親はそのことをずっと気に病んでいました。
さらに、誠治が仕事を辞めて無職になり、引きこもるような生活を送っていたことも母親の心労を増やしました。母親の病状は一気に悪化し、今のような状態になってしまったのです。
誠治はその話を聞いて、自分の情けなさを痛感しました。母親を助けるためにはどうすればいいか考えた結果、一家が引っ越すことができれば母親の病状が良くなるかもしれないと思いました。そこで、誠治は正社員になって、父親と二世帯ローンで家を買うことを決意しました。
この決意が誠治の新しい人生の第一歩となりました。母親のために、家族のために、誠治は再び就職活動を始めることを決心したのです。
誠治は、もう一度就職することを決意しました。しかし、昼間の面接に行くためには、昼間は自由な時間が必要です。そこで、夜勤の建設現場でアルバイトを始めることにしました。夜勤なら昼間の時間を面接や準備に使えるからです。
誠治の母親はまだ通院が続いていました。母親が夜に薬をきちんと飲む必要があるため、父親の誠一に夜間の薬の対応を頼みました。誠治は朝と昼は母親と一緒に過ごし、サポートするようにしました。しかし、精神病に対する理解がない父親は、あまりしっかりと母親をサポートしませんでした。
毎日薬を飲ませなければならないのにも関わらず、父親は母親に声掛けをすることを怠ってしまいました。その結果、母親は薬を飲んだと偽って隠すようになってしまいました。そんなことが続いたある日、母親の病状がさらに悪化し、母親は自殺未遂を起こしてしまいました。
この出来事は家族全員にとって大きなショックでした。父親は事態の深刻さを初めて理解し、後悔しました。誠治と姉の亜矢子は怒りましたが、家族全員が歩み寄りが足りていないことにも気付きました。そして、今までよりも強い連帯感を持って母親をサポートしていこうと決心しました。
父親は、今まで母親の病気を本人の甘えだと思っていました。しかし、母親の病気が予想以上に深刻であることに気付きました。父親はショックを受けましたが、できる範囲で母親に寄り添うようになりました。
誠治もまた、母親のためにできることを増やしていきました。夜勤の仕事から帰った後も、母親のために時間を割き、家事や看護を手伝いました。そして、昼間の時間を使って再就職に向けた準備を進めました。履歴書を書いたり、面接の練習をしたりしました。
誠治の再就職への挑戦は、母親のサポートと並行して進んでいきました。家族全員が協力し、母親の病状を少しでも改善させるために努力しました。こうして誠治は、家族の絆を深めながら、再び社会に出るための準備を整えていったのです。
誠治は母親の病気に付き合いながらも、就職活動を続けました。その結果、ついに二つの内定を勝ち取ることができました。一つは安定した給料が期待できる製薬会社、もう一つはアルバイト先であった建築会社です。
製薬会社の仕事は安定していますが、給料が少し低めでした。一方、建築会社の仕事は体を使う仕事が多く、父親の誠一は「そんな仕事はダメだ」と反対しました。しかし、誠治は建築会社での仕事にやりがいを感じていました。彼は自分がこの仕事で成長できると信じ、建築会社に入社することを決めました。
建築会社での誠治の仕事は、パソコンを使って業務を効率化することから始まりました。もともとパソコンが得意だった誠治は、IT化がほとんど進んでいないこの会社にパソコンを導入しました。倉庫の在庫管理や発注状況を整理するなど、誠治は自分の能力を発揮しました。
ある日、上司から「誠治のような人をもっと雇いたい」と言われました。誠治は自らキャッチコピーを考え、求人広告を作成しました。その結果、予想以上に多くの応募があり、上司は驚きましたが、誠治の能力を評価するようになりました。
誠治は働くことのやりがいと楽しさを感じ始めました。初めは慣れない仕事に苦労しましたが、次第に仕事のコツを掴み、上司や同僚からの信頼を得るようになりました。誠治は自分が社会の一員として役立っていることを実感し、充実感を味わいました。
母親の病状も少しずつですが、家族の団結のおかげで回復の兆しが見えました。それでも、今の町の環境が母親にとって良くないことは変わりありませんでした。誠治は決してお金を浪費せず、家を買うための貯金を続けました。その結果、ついに頭金として三百万円を貯めることに成功しました。
誠治は、家族のために、そして母親のために新しい家を買うという目標に向かって、一歩一歩確実に進んでいったのです。新しい仕事での経験と努力が、誠治にとって大きな成長となり、家族全員の希望をつなぐ力となりました。
誠治が貯金に成功し、家を買うための頭金を用意した頃、新しい出来事がありました。ある日、誠治の職場の後輩が雨の中で子猫を拾ってきたのです。二匹の子猫のうち、一匹は残念ながらすぐに死んでしまいましたが、もう一匹は元気に生き残りました。誠治の家族はその子猫を家で飼うことにしました。
母親の寿美子は最初、その子猫を飼うことに反対していました。昔、家で飼っていた猫が近所の人にいたずらをされた過去があり、そのことをまだ気にしていたからです。しかし、時間が経つにつれて、寿美子はその子猫をかわいがるようになりました。子猫の存在は、家族にとって大きな癒しとなりました。
また、誠治の後輩の女性、真奈美が誠治に好意を寄せるようになりました。真奈美は明るくて親切な女性で、誠治も彼女に対して好感を持っていました。しかし、母親のことを思うと、誠治はどうしても自分が誰かと付き合うことに不安を感じていました。真奈美の気持ちを知りつつも、その思いに応えられずにいました。
ある日、誠治は父親に「家を買うための頭金が貯まりました」と相談しました。すると、父親は「二世帯ローンにする必要はない。頭金は使うが、残りのローンは自分で払う」と言いました。誠治は驚きました。今まで母親が病気になってからは、ずっと両親と暮らす必要があると決めていたからです。
父親の言葉を聞いて、誠治は自分にも恋愛や結婚という選択肢があることに気付きました。真奈美のことを考えると、誠治は自分も幸せになっていいのだと思えるようになりました。そこで、誠治は真奈美を自分の家に呼び、家族と一緒に過ごすことを提案しました。真奈美も喜んでその提案を受け入れました。
無事に引っ越し先の家も決まり、一家は新しい家に住むことになりました。母親の病気は完全には治りませんが、少しずつ快方に向かっています。誠治は、自分が成長し、家族が少しずつ幸せに向かっていることを実感しました。
新しい家での生活が始まり、誠治の心には新たな希望が芽生えました。家族の絆が深まり、新しい家族の一員となった子猫、そして真奈美との関係。誠治は、自分が幸せになることが母親の喜びにも繋がると信じ、新しい生活に向けて一歩を踏み出しました。
有川浩「フリーター、家を買う」の感想・レビュー
『フリーター、家を買う』は、家族の問題と向き合い、それを乗り越えようとする主人公・誠治の物語です。この物語は、ただ単に感動的なだけでなく、家族の中で起こる問題やそれに対する各人の感情をリアルに描いています。
誠治はもともと仕事をしていましたが、3か月で辞めてしまい、その後は家で時間を過ごしています。この時、彼は母親の様子がおかしいことに気付きます。母親はうつ病と精神病を併発していて、それをきっかけに誠治は家族の問題に目を向けるようになります。
特に印象的なのは、誠治が家族のためにもう一度就職活動をするシーンです。彼は昼間は母親の世話をし、夜はアルバイトをするという大変な生活を送りながらも、家族を支えようとします。この姿が、家族への愛情と責任感を感じさせ、読む人の心を打つのです。
また、物語の中で家族の問題が少しずつ解決していく過程も魅力的です。家族それぞれがお互いを理解し、支え合う姿が描かれており、読むことで家族の大切さや絆の深さを改めて考えさせられます。
最後に、誠治が家を購入することで家族が新しい生活を始めるシーンでは、彼らがこれまでの困難を乗り越えてきた達成感と希望が感じられます。この新しい家が、彼らにとって新たなスタートであり、これからの幸せへの一歩として描かれています。
全体を通して、『フリーター、家を買う』は家族の愛と困難を乗り越える強さを描いた作品であり、読む人の心に深く残る物語です。
まとめ:有川浩「フリーター、家を買う」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 主人公の誠治は仕事を辞め、母親の精神疾患と家族の問題に直面する。
- 誠治は再就職活動を始め、夜勤のアルバイトをしながら昼間は母親のサポートをする。
- 誠治の父親は母親の病気を理解せず、家族の間には摩擦が生じる。
- 誠治は建築会社で働き、能力を発揮して上司や同僚からの信頼を得る。
- 誠治は家を買うための貯金に励み、頭金を貯めることに成功する。
- 新しい家族の一員として誠治の家に子猫が迎えられ、家族の絆が深まる。
- 誠治は恋愛にも興味を持ち、家族とともに幸せな新生活をスタートする。
- 誠治の成長と家族の団結が物語を通じて描かれ、読者に感動を与える。
- 家族の問題や誠治の奮闘が通して、人間関係や家族愛の重要性が示される。
- 物語の結末で、誠治と家族が新しい家で幸せを見出す姿が描かれる。