SAPIX新小4の2月スタートで遅れた時の立て直し。応用を捨てる決断

新小4の2月、SAPIXに通い始めて1か月もたたないうちに「もう遅れている」と感じたなら、その焦りは正しい感覚です。そして、その遅れはお子さんのせいではありません。

SAPIXのカリキュラムは、入塾したばかりの小4生にも容赦なく、毎週新しい単元と大量の教材を積み上げていきます。授業で習ったことを家で消化しきれないまま、次の授業がやってくる。この構造の中で、2月の時点でつまずく子は決して少なくありません。

わたしは埼玉の大手塾で10年教壇に立ち、その後20年以上、プロ家庭教師として集団塾に通う子どもたちを見てきました。新小4の2月に崩れかけたご家庭に、わたしが必ずお伝えしていることがあります。それは、応用問題をいったん完全に捨て、Aテキストだけを完璧にするという決断です。

SAPIX新小4の2月に遅れが生まれる構造

新小4の2月に遅れを感じる原因は、子どもの理解力ではなく、スタート時期に特有のカリキュラムの組まれ方にあります。

「塾に慣れる」時間が用意されていない

SAPIXの新学年は2月に始まります。多くの子にとって、週に何日も夕方から塾に通い、帰宅後に復習をするという生活そのものが初めての経験です。

本来なら、まず生活リズムに慣れる時間が必要です。ところが、カリキュラムは入塾初週から通常どおり進みます。生活の変化への適応と、新しい学習内容の吸収を同時に求められる。小学3年生の3学期を終えたばかりの子にとって、これはかなりの負荷です。

教材は「全部やる子」を前提に配られる

授業のたびに、テキストに加えて復習用の教材が配られます。算数であれば基礎的な問題から応用的な問題まで、幅広いレベルの問題が並んでいます。

この教材は、クラスに関係なく全員が「すべて解く」ことを前提にしているわけではありません。しかし、塾に通い始めたばかりの家庭には、どこまでやればいいかの基準がありません。結果として、真面目なご家庭ほど全部をやらせようとして、時間が足りなくなります。

1週間の遅れが、次の週の遅れを生む

SAPIXの授業は、前の週の内容を土台にして次の単元へ進みます。1週目の復習が終わらないまま2週目の授業を受けると、2週目の理解も浅くなる。こうして、小さな遅れが雪だるま式に大きくなっていきます。

2月に「遅れた」と感じるのは、この雪だるまが転がり始めた最初のサインです。逆に言えば、今このタイミングで手を打てば、傷は浅いうちにふさげます。

現場で見てきた新小4の典型的なつまずき

新小4の2月に崩れかけるご家庭には、驚くほど共通したパターンがあります。

宿題を全部終わらせるまで寝かせなかった家庭

以前担当した新小4の男の子のご家庭では、配られた教材をすべて終わらせることを毎日のルールにしていました。お母さんはとても熱心で、毎晩横について問題を見ていたそうです。

ところが、わたしが教材を見せてもらうと、応用的な問題に毎晩1時間近くかけている一方で、基本問題の計算ミスがそのまま残っていました。時間の大半を、今の段階で解けなくても困らない問題に使っていたのです。

「解説を読めば分かる」で止まっていた家庭

別の女の子は、解説を読めば「分かった」と言うのに、翌週のテストでは同じタイプの問題で手が止まっていました。

解説を読んで理解することと、何も見ずに自分の力で解けることは、まったく別のものです。この子に必要だったのは、新しい問題に手を広げることではなく、基本問題を何も見ずに解き直す時間でした。

どちらのご家庭も、親の頑張りが足りなかったわけではありません。足りなかったのは、「何をやって、何をやらないか」の線引きだけでした。

Aテキストだけを完璧にする、という決断

ここからが本題です。新小4の2月に遅れた状態を立て直すために、わたしがおすすめしているのは、応用問題(Bテキスト以降)を完全に手放し、Aテキストだけを完璧にすることです。

なぜ応用を「完全に」捨てるのか

「少しだけ応用もやらせたい」という気持ちはよく分かります。しかし、中途半端に残すと、結局そこに時間を取られてしまいます。

新小4の今の段階で最も大切なのは、毎週の基本事項を確実に身につけることです。応用問題は、基本が固まっていない子にとっては、時間がかかるわりに得るものが少ない。だからこそ、迷いなく「今はやらない」と決めることが大切です。

区分 対象 今の扱い
完璧にする Aテキスト(基本事項・基本問題) 何も見ずに解けるまで繰り返す
毎日続ける 計算・漢字などの基礎の積み上げ教材 短時間でも毎日欠かさない
完全に手放す Bテキスト以降の応用問題 開かない。印もつけない

「捨てる」ことは「あきらめる」ことではない

応用問題を手放すと聞くと、「それでは上のクラスに上がれないのでは」と不安になるかもしれません。

ですが、基本が穴だらけのまま応用問題に取り組んでも、応用力は身につきません。基本事項を何も見ずに使いこなせるようになって、初めて応用問題が解けるようになります。順番を入れ替えるだけで、むしろ伸びるスピードは上がります。

わたしが見てきた子の中にも、Aテキストに絞った数か月後に、以前は手も足も出なかった問題をあっさり解けるようになった子が何人もいます。

「完璧」の基準を決めておく

Aテキストを完璧にすると言っても、基準があいまいだと、どこまでやればいいか分からなくなります。わたしがご家庭にお願いしている基準は次のとおりです。

  1. 何も見ずに、最初から最後まで自分の力で解ける
  2. なぜその式になるのかを、口で説明できる
  3. 数日空けて解き直しても、同じように解ける

この3つを満たした問題だけを「完璧」とします。

新小4のスケジュールを引き直す

取捨選択を決めたら、次は1週間のスケジュールを引き直します。ポイントは、空いた時間を新しい教材で埋めるのではなく、Aテキストの解き直しと、子どもの休息に充てることです。

タイミング やること 時間の目安
授業当日 Aテキストの基本問題を何も見ずに解き直す 15〜20分
翌日 Aテキストの残りの問題 30分
2〜3日後 間違えた問題だけを再挑戦 15〜20分
毎日 計算・漢字などの基礎の積み上げ 10〜15分
週末 1週間分の間違いを通しで確認 30分

時間はあくまで目安です。習い事の有無や、お子さんの集中が続く時間にあわせて調整してください。

授業当日の15分が、1週間を左右する

人は習った内容を驚くほど早く忘れます。授業で聞いた解き方が頭に残っているうちに、基本問題をもう一度自分の手で解く。この15分があるかないかで、その週の定着度は大きく変わります。

疲れて帰ってきた日に長時間やらせる必要はありません。数問でいいので、何も見ずに解く時間をつくってください。

間違えた問題だけを追いかける

2回目以降の復習は、間違えた問題だけに絞ります。正解できた問題を何度も解き直すのは、安心感はあっても効率がよくありません。

間違えた問題には日付と印をつけ、次に正解できたら印を消す。印が減っていく様子は、子どもにとっても目に見える手応えになります。新小4のこの時期は、成績以上に「やればできる」という感覚を持たせることが大切です。

空いた時間は、休ませることに使う

応用問題を手放すと、毎日の学習時間に余裕が生まれます。その時間を、別の問題集で埋めないでください。

新小4の2月は、塾通いという新しい生活に体と心を慣らしている時期です。十分な睡眠と、好きなことをする時間があってこそ、塾での集中力も保てます。

テストの点数とどう向き合うか

応用問題を手放すと、テストでは後半の問題がほとんど解けないかもしれません。そこで親が動揺してしまうと、せっかく引き直したスケジュールがすぐに崩れます。

見るべきは「基本問題の正答」だけ

テストが返ってきたら、まず確認してほしいのは、前半の基本的な問題でどれだけ得点できているかです。後半の応用問題が解けていないのは、今の方針どおりの結果です。気にする必要はありません。

逆に、基本問題で失点しているなら、そこが次の1週間で優先して取り組むべき場所です。テストは成績表ではなく、Aテキストの定着度を確かめるための材料として使ってください。

偏差値やクラスの上下に振り回されない

新小4の最初の数か月は、偏差値やクラスが大きく上下しやすい時期です。周りの子と比べて焦る気持ちは自然なものですが、この時期の数字で将来が決まるわけではありません。

わたしがこれまで見てきた中でも、新小4の春に下のクラスにいた子が、基本を固めたあとに着実に伸びていったケースは珍しくありません。

応用問題にはいつ戻ればいいのか

応用問題は、永遠に捨てるわけではありません。戻るタイミングの目安は、Aテキストの問題が、数日空けても何も見ずに解ける状態が数週間続いたときです。

そのときも、いきなりすべての応用問題に取り組むのではなく、基本問題のすぐ先にある問題から少しずつ広げていきます。土台ができてから戻ると、以前は1時間かかっていた問題が驚くほど短い時間で解けることがあります。

焦って早く戻ると、また同じ消耗が始まります。戻る時期は、テストの点数ではなく、Aテキストの定着度で判断してください。

この取捨選択を、親が毎週続けるということ

ここまでお伝えした方法は、今日からどのご家庭でも始められます。ただ、正直にお伝えしておきたいことがあります。

毎週配られる教材に目を通し、どこまでがAテキストの範囲で、どの問題を手放すかを判断する。間違えた問題を記録し、解き直しのタイミングを管理する。これを仕事や家事と並行して毎週続けるのは、想像以上に重い負担です。

しかも、どの問題をやらなくてよいかを正しく見極めるには、SAPIXのカリキュラム全体の流れを知っている必要があります。この先の単元で何が必要になるかが分からないと、「捨ててはいけない問題」まで捨ててしまうこともあります。

そして何より、親が「管理する人」になるほど、子どもにとって家は気の休まらない場所になっていきます。新小4はまだ10歳になるかどうかの年齢です。親が担うべきなのは、塾から帰ってきた子がほっとできる場所をつくることなのかもしれません。