住民税を会社から引かれない正社員!? その理由とリスクと対処法

突然だが、「住民税を会社から引かれない正社員」という状況に遭遇したことはあるだろうか。「正社員として働いているのに、なぜか会社から住民税が天引きされていない」「このままだと自分で納付しなければならないが、どこで払えばいいのか?」といった疑問や不安を抱える人は意外と多い。

住民税は所得税と並んで給与から天引きされるイメージが強いが、実は天引き(特別徴収)にならないケースがあるのだ。この記事では、そんな“会社から住民税が引かれない正社員”の実態や理由、リスク、対処法を網羅的に解説する。知らずに放置すると、思わぬ延滞金の発生や、転職時に困る可能性もあるので要注意である。
この記事を読めば、

  • なぜ自分だけ住民税が会社から引かれていないのか
  • 住民税の仕組みと納付方法
  • 会社から住民税を引かれない場合のリスクと対処法

がまるっと理解できるはずだ。途中で「なるほど」「それは危ないかも……」とクスッと笑いながら、最後には「あ、こうすればいいんだ」と腹落ちする情報をお届けする。ぜひ最後までお付き合いいただきたい。

1. 住民税を会社から引かれない正社員とは?

まず、「住民税を会社から引かれない正社員」とはどんな人なのかを簡単に整理しよう。正社員であれば多くの場合、給与から住民税が天引き(特別徴収)されるのが通常だ。ところが、何らかの理由で給与明細を見ても住民税項目がまったく記載されていないケースがある。これが“会社から住民税を引かれない”状態だ。

正社員であっても、以下のような場合に特別徴収が行われず、自分で住民税を納める「普通徴収」になってしまうことがある。

  • 会社が特別徴収の手続きをしていない/できない
  • 自身の雇用形態や前職などの影響で、制度上のタイミングがズレた
  • 自分で申告すべき住民税があるにも関わらず、会社を通じて処理されていない

何はともあれ、住民税は支払わなければならない税金である。“引かれない”からといって無視していると、後で高額な支払いを求められたり、延滞金が発生したりしかねない。「払わなきゃならないのは分かってるけど、どうしたらいいのか分からない!」という人のために、次の章から具体的に理由や対処法を見ていこう。

2. 住民税が会社から引かれない4つの理由

「なぜ自分だけ会社から住民税が引かれないのだろう?」という疑問を持つ方は多い。ここでは、代表的な4つの理由を挙げて解説する。

理由1:特別徴収の手続き漏れ

本来、会社は従業員の住民税を特別徴収する義務がある。多くの自治体では、従業員の数に関係なく、原則として「給与を支払う者は特別徴収義務者となる」旨を定めている。ところが、会社が手続きに不慣れだったり、従業員の増減によって役所への書類提出が後回しにされたりすると、住民税の徴収が普通徴収に切り替わってしまうケースがあるのだ。

よくあるのが、新設会社や規模拡大中のベンチャー企業などで、経理担当が十分に確保できず、社会保険や税金関連の処理が追いついていない場合だ。ベンチャー勤務の友人を持つ方は「新人で税金回りも全部任されている」といった武勇伝(?)を聞いたことがあるかもしれない。冗談半分に聞こえるが、実はそのような会社で「手続き漏れ」が起きてしまい、住民税が天引きされないパターンが十分に考えられる。

理由2:転職や退職でタイミングがズレた

住民税は基本的に、前年度の所得をもとに算出される。そのため、年度の途中で転職や退職があると、次の就職先で特別徴収へ切り替える手続きをする時期が微妙にズレる。結果的に一時的に自分で納付しなければならない期間(普通徴収)が生じる。

たとえば、5月〜6月頃は住民税の年度切り替えシーズンだ。給与から特別徴収されるタイミングや自治体から送付される納税通知書のスケジュールが合わなかった場合、「あれ? 会社から天引きされてない」と感じる期間が発生する。

理由3:個人事業主時代の名残

正社員になる前にフリーランスや個人事業主として働いていた場合、住民税は普通徴収となっていることが多い。こうした人が就職して正社員になった際、会社が特別徴収へ切り替える手続きを役所に申請しないと、引き続き普通徴収のまま放置されることがある。

また、自身で確定申告をしている方も注意が必要だ。確定申告書の住民税欄に「自分で納付」などの選択肢があり、そこを誤って(あるいは意図的に)選んでしまうと、会社ではなく自分で住民税を納付する形になる。自分の意志ならまだしも、うっかりチェックを間違えて普通徴収を選択してしまっている人も珍しくない。

理由4:会社が特別徴収を行っていない

特別徴収は法律上は原則として義務化されている。しかし、特別徴収を行わずに社員に任せている(あるいは「普通徴収でもOK」と認めている)会社が稀に存在する。これは実は自治体から指導が入る可能性が高いケースで、本来であれば認められない。

規模の小さい会社、オーナー社長が自由にルールを決めている会社などでは、「給与天引きする作業が面倒だから普通徴収にしてもらっている」ということが現実に起きている。法令上は好ましくない状態だが、こうした会社に当たった場合、正社員であっても自分で納付しないといけなくなる。

3. 住民税を会社から引かれない正社員のリスクと注意点

では、「住民税を会社から引かれない正社員」でいることには、どのようなリスクや注意点があるのだろうか。「払う税金が減るわけでもないし、とりあえず放置してもいいのでは?」と思いがちだが、意外にもさまざまな落とし穴が存在する。

  1. 延滞金の発生
    普通徴収の場合、納付期限が設定されている。万が一、うっかり期限を過ぎてしまうと延滞金が発生することがある。誤って「会社がそのうち天引きしてくれるだろう」と思い込んで放置していると、役所から督促状が届き、気づいた頃には延滞金がドーンと……なんて可能性も。

  2. 信用情報への影響は?
    住民税の滞納が続くと、最悪の場合は給与や財産の差し押さえ措置に発展することもある。もちろん多額の滞納をした場合の話だが、自治体によっては数万円単位の滞納でも容赦なく督促が来るケースもある。信用情報機関のブラックリストとは少し異なるが、公共料金や税金の滞納が続くと公的機関からの信頼が下がり、後々ローン審査などで不利になる可能性は否定できない。

  3. 翌年の住民税がさらにズレ込む可能性
    特別徴収に切り替わらないままだと、翌年も普通徴収になり、タイミングを逸するごとに「今回も自分で払うの?」と疑問を抱き続ける羽目になる。タイミングを逃さずに正しい手続きを踏んでおかないと、延々とズレが生じ続けることもあり得る。

  4. 転職時に書類で苦労する
    住民税が普通徴収のままだと、転職先の会社が前の会社から住民税情報をうまく引き継げず、またしても特別徴収がスタートしない……という負の連鎖に陥る可能性がある。転職するときに必要な住民税に関する書類がややこしくなり、「前職からの書類には普通徴収と書いてあるのに、弊社では特別徴収の予定です」とややこしい話になりやすい。

いずれにせよ、住民税が会社から引かれないまま放置するのはリスクが高い。確定申告や年末調整といった税務処理が発生する日本社会において、住民税の扱いは早めにクリアにしておきたいところだ。

4. 会社から引かれない住民税の納付方法

では、もしあなたが「住民税を会社から引かれない正社員」であり、普通徴収として自分で住民税を納付しなければならない場合、具体的にはどうすればいいのか。主な方法を見ていこう。

  1. 納税通知書による納付
    各自治体から、普通徴収の対象者には「納税通知書」が送られてくる。封筒を開けると、納付書が複数枚つづりで入っているはずだ。そこには、各期の納付期限と金額が記載されているので、それに従って金融機関やコンビニなどで納める。

    • 銀行や郵便局、コンビニでの支払い
    • クレジットカード払い(対応している自治体も多い)
    • インターネットバンキング、電子マネーでの支払い
      といった手段がある。自治体によって対応状況が異なるため、納税通知書の説明をよく読もう。
  2. 口座振替を利用する
    自治体によっては、住民税を口座振替(自動引き落とし)で納付する手続きができるところも多い。わざわざ納付書を持ってコンビニに行かなくても済むので便利だが、申請書の提出や口座登録に時間がかかる可能性がある。早めに申し込んでおくと安心だ。

  3. 年の途中で特別徴収に切り替えてもらう
    会社に相談して、特別徴収への切り替えをお願いすることもできる。ただし、自治体が定める手続きに従い、会社が「特別徴収切替依頼書」を役所に提出する必要がある。年の途中で切り替えが可能かどうかは自治体の対応次第だが、可能であれば手続きしたほうが後々ラクになるだろう。

5. 住民税が会社天引きにならない状況を回避する方法

「そもそも、住民税は会社が天引きしてくれたほうが楽だ」と考える人がほとんどだろう。ここでは、住民税を会社から引かれない正社員状態を避けるために、あらかじめできる対策をまとめておく。

  1. 転職時に会社側へ確認する
    転職をしたら、なるべく早い段階で「住民税は特別徴収になるかどうか」を人事・総務部に確認しておくことが大切だ。前職の住民税が普通徴収になっていた場合は、その旨を伝え、転職先の会社に特別徴収の切り替えをしてもらえるように相談しよう。

  2. 確定申告の際のチェックを慎重に
    フリーランスや副業収入などで確定申告をする人は、住民税の納付方法の選択欄に注意だ。つい「自分で納付(普通徴収)」にチェックしてしまうと、会社の給与分まで普通徴収で処理されてしまう可能性がある。どうしても自分で納付したい理由がない限りは、「特別徴収」にチェックを入れたほうがスムーズだ。

  3. 会社から特別徴収への手続きが行われているか確認
    会社の経理担当者や総務部が忙しく、住民税特別徴収に必要な書類提出を失念しているケースもある。正直なところ、こうしたヒューマンエラーは珍しくない。数か月経っても給与明細に住民税項目が見当たらないようであれば、遠慮せず担当者に「私の住民税は特別徴収になってますか?」と聞いてみるのが手っ取り早い。

  4. 小規模事業所の場合は自分で申請する意志を示す
    小さな会社やスタートアップ企業では「社員個々の事情で普通徴収にしている」という名目で、事実上会社が特別徴収を避けていることがある。もし自分が特別徴収を希望する場合は、自治体のサイトなどを参照して手続き方法を調べ、会社側に協力を依頼しよう。自治体から会社に「特別徴収義務者としての指定」が行われることもあるので、「法律で決まっている」と言えば会社も対応せざるを得ないはずだ。

6. 【事例紹介】住民税を会社が引いてくれなくて困ったAさんのケース

ここでは具体的な事例を一つ紹介する。Aさんは30代男性、今年度から正社員として働いているにもかかわらず、会社から住民税が天引きされていなかった。なぜそのようなことが起こったのか、どう解決したのかを見ていこう。

Aさんの背景

  • 前職は個人事業主として3年間活動し、毎年確定申告していた。
  • 今年度の途中からIT企業へ正社員として入社した。
  • 「前職の住民税が普通徴収になっているはずだけど、就職すれば会社が天引きしてくれるだろう」と軽く考えていた。

問題が発覚したきっかけ

  • 入社後半年が経っても、給与明細に住民税控除の欄がなく、ちょっと不安になる。
  • ある日、役所から届いた郵便物を開けてみると「住民税納付書」が同封されていた。しかも期日を過ぎている分がある。軽いパニック状態に。
  • 会社に確認すると、「あ、特別徴収の手続きまだやってなかったです……」という担当者の言葉に思わず爆笑(いや、笑えない)。

解決方法と結果

  • まずは未納分について速やかにコンビニで納付。
  • その上で、会社に「特別徴収切替申請書」を役所へ提出してもらい、次の給与明細から特別徴収がスタートした。
  • 最初の特別徴収タイミングで、Aさんは前年度分の残りもまとめて引かれ、思わぬ大きな額に驚いたが、これで納付し忘れリスクはなくなった。
  • Aさんは「もっと早く気づいていれば延滞金も発生しなかったのに……」とちょっと後悔。

このように、住民税を会社から引かれない正社員状態に陥った場合、気づくのが遅れると延滞金が発生する恐れがある。会社側の手続きミスもゼロではないので、不審に思ったら自分から確認するのが大切だ。Aさんのように、気がつけば何万円もの追納を抱えて右往左往……なんて事態を避けるためにも、給与明細のチェックはこまめに行いたい。

7. まとめ:住民税を会社から引かれない正社員は早めの対処がカギ

ここまで「住民税を会社から引かれない正社員」に関する状況や理由、リスク、そして具体的な対処法を解説してきた。最後にポイントを振り返っておこう。

  1. 住民税が会社から引かれないのは珍しいことではない

    • 特別徴収の手続き漏れや、転職時のタイミング、個人事業主の過去などが原因で普通徴収になるケースが多い。
    • 会社が手続きを怠っている場合もあるので、放置せず確認すること。
  2. 普通徴収は自分で支払わなければならない

    • 住民税の納付書が自治体から送られてくるので、期日を守って納める。
    • 延滞すると延滞金や督促状が発生し、思わぬ出費につながる可能性がある。
  3. 特別徴収への切り替えがおすすめ

    • 給与から天引きされるため、納め忘れがなくなる。
    • 転職時や確定申告時に適切な申請をし、会社と自治体に協力してもらうのが近道。
  4. こまめに給与明細をチェックし、会社に確認を取ろう

    • 会社の担当者が忙しく手続きし忘れているケースも。
    • 住民税控除欄がないことに気づいたら、早めに人事・総務に相談しよう。

「会社から住民税を引かれない正社員」というのは、一見すると税金が安くなった気もするし、「給料がちょっと多いかも?」と最初は喜んでしまうかもしれない。だが、その裏にはきっちり税金の支払い義務が潜んでいる。放置すれば延滞金やトラブルの原因になるので、くれぐれも油断は禁物だ。

気になることや不安な点があれば、まずは人事や総務に確認してみることが大切である。また、各自治体のサイトにも住民税に関する詳細な情報が掲載されているので、参考にするといいだろう。

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