
この記事では、「ありがとう」に対する「とんでもないです」という答え方が正しいかどうかという点を中心に、日本語における感謝と謙遜の表現方法や、日常生活でよく聞くやり取りの背景、正しい使い方などをわかりやすく解説します。できるだけ具体例を交えて丁寧に説明していきます。日本語の面白さや奥深さをぜひ感じ取ってください。
1. 「ありがとう」に対する「とんでもないです」とは?
「ありがとう」に対する「とんでもないです」というフレーズは、日本語の日常会話でよく見られる表現です。実際の会話では「ありがとうございます」「いえいえ、とんでもないです」と分けて使われることが本来の形なのですが、このような形で使われることがあります。
- ありがとう:感謝を伝える言葉
- とんでもないです:謙遜や相手の感謝を受け流す表現
日本語では、相手から感謝をされたときに「いえいえ」「とんでもない」「とんでもないです」「大したことはしていませんよ」などの言葉で返すことが一般的です。「とんでもないです」という言葉には「そんな大層なことをしていませんよ」というようなニュアンスが含まれており、相手からの感謝やお礼に対して「いやいや、こちらこそ恐縮です」という意味で使われます。
2. 「ありがとう」と「とんでもないです」の基本的な意味
2-1. 「ありがとう」の語源と意味
「ありがとう」という言葉は、日本語を代表する感謝の言葉です。その語源は諸説ありますが、「有り難い(ありがたい)」が形を変えたものだと言われています。「有り難い」は漢字で「有ることが難しい」という意味を持ち、「めったにない貴重なこと」「ありがたいこと」という由来があります。そこから転じて「貴重な行為に対して感じる深い感謝」を表すようになりました。
2-2. 「とんでもないです」の語源と意味
「とんでもない」は平安時代頃の古語「途(と)でもない」「途方(とほう)もない」などが変化したものだと言われています。現代では、
- 「予想をはるかに超えている」
- 「あり得ない、もってのほか」
- 「とんでもないです(そんなことはございません)」という謙遜表現
などの意味合いで使われます。特に相手から感謝や称賛を受けた際に使う「とんでもないです」は、「私などがそのような大したことをしたわけではありません」という謙遜の気持ちを表すうえでよく用いられます。
3. 感謝の気持ちと謙遜の気持ち:日本人のコミュニケーションの特徴
日本語には、相手を敬ったり、自分をへりくだったりする表現が非常に多く存在します。「ありがとう」に対する「とんでもないです」という一連のやり取りは、日本人が大切にしている「和」を保つためのコミュニケーションの一例でもあります。
- 相手への尊重:「ありがとう」という言葉で、まず相手の行為や思いやりをしっかりと受け止め、敬意を表します。
- 自己の謙遜:「とんでもないです」という言葉で、自分の行為や存在を過度に高く見せないようにするのが日本人の慎ましさの表れとも言えます。
たとえば、お土産をもらったときや仕事で助けてもらったときなど、ささやかな状況でも日本人は「ありがとう」と言い、その後「いえいえ、とんでもないです」「こちらこそありがとうございます」などと返すやり取りが自然に出てきます。これらのやり取りは単に挨拶的な社交辞令ではなく、相互の敬意や遠慮が入り混じった日本特有のコミュニケーションスタイルといえるでしょう。
4. 「ありがとう とんでもないです」の使い方:実例で学ぶ会話術
ここでは、具体的なシーンを想定して「ありがとう」に対する「とんでもないです」という流れがどのように使われるかを見ていきましょう。
4-1. 日常生活の例
-
シーン1:友達同士での助け合い
- Aさん「荷物持ってくれてありがとう!助かったよ。」
- Bさん「とんでもないです!大したことじゃないよ。」
友達同士だと少し砕けた形で「とんでもないよ」「いえいえ、全然!」という言い方に変わる場合もあります。
-
シーン2:家族内でのやり取り
- 母「洗い物してくれてありがとう。」
- 息子「とんでもないです。僕も使ったお皿だし、当然のことだよ。」
家族間ではさらにフランクになり、「いいよ、別に」「全然平気だよ」などと表現されることが多いですが、丁寧に言うと上記のような流れになります。
4-2. ビジネスシーンの例
-
上司・部下のやり取り
- 上司「企画書、手伝ってくれてありがとう。おかげで締切に間に合ったよ。」
- 部下「とんでもないです。上司がうまくまとめてくださったので助かりました。」
社内でのやり取りでは「ありがとうございます」「とんでもございません」という言い回しもよく使われます。ビジネスの場面では敬語を使うことが基本となるため、日常会話より丁寧な表現でやり取りするのが一般的です。
5. ビジネスシーンにおける注意点
5-1. 「とんでもないです」の敬語レベル
ビジネスの場では、やや硬めの敬語を使う必要があります。「とんでもないです」は丁寧語の一種ですが、さらに改まった表現として「とんでもないことでございます」などもあります。しかし、あまりにも大袈裟に聞こえる恐れがあるため、相手との距離感や社内での上下関係を考慮して使い分けることが大切です。
5-2. 場合によっては「いえ、こちらこそありがとうございます」と返す
相手から感謝の言葉をもらった際に、どんなシチュエーションでも「とんでもないです」の一点張りだと、少し素っ気ない印象を与える場合もあります。ビジネスパートナーや取引先など関係を深めたい相手に対しては、以下のようにさらにポジティブな言葉を加えると、好感度が高まります。
- 「いえいえ、こちらこそ助かりました。ありがとうございます。」
- 「いえ、とんでもないです。いつもお世話になっています。」
ビジネスにおいては、感謝や敬意の表現がコミュニケーションを円滑にする大切な要素です。相手の立場や状況を考えながら、言葉選びを工夫するとよいでしょう。
6. 感謝と謙遜のバランスを保つコツ
「ありがとう」に対する「とんでもないです」というやり取りが日本で一般的とはいえ、常に相手の感謝を「とんでもないです」だけで返していては、相手に対するリスペクトが十分に伝わらない場合もあります。大切なのは、「ありがとう」という言葉を素直に受け取りつつ、自分の功績をひけらかさない」というバランスです。
6-1. 相手の立場を考える
相手がどんな気持ちで「ありがとう」を言っているかを想像し、それに応じてこちらの返事を工夫することで、より温かみのあるコミュニケーションが生まれます。相手が本当に感謝しているのに「いえいえ、とんでもないです」のみで返すと、「本当に助かったのに、そこまで謙遜しないでほしい」と感じる人もいるかもしれません。
6-2. 具体的に相手をねぎらう
「こちらこそ、○○していただいたおかげで助かりました」と具体的に相手の行為を取り上げて感謝を示すのも良い方法です。こうすることで、謙遜しながらもお互いの努力を称え合う、円満なコミュニケーションが成立します。
6-3. ポジティブな返しで感謝を循環させる
例えば、英語圏の文化では「Thank you」に対して「You’re welcome」という答えが一般的です。日本語で同じように返す場合は「ありがとう。」「どういたしまして。」が一番近い言い回しかもしれません。しかし、日本人の場合は「どういたしまして」よりも「とんでもないです」という謙遜の言葉のほうがよく使われる傾向があります。
一方で、謙遜しすぎると相手の感謝を否定しているように聞こえることもあるため、ポジティブな表現をバランスよく加えることが重要です。
7. 誤用を避けるためのポイント
7-1. 「とんでもない」をネガティブに使わない
会話の流れから、「とんでもない」だけを取り出すと「そんなこと考えられない」「非常識だ」といった否定的な意味に捉えられる場合があります。たとえば、何か問題が起きて「これはとんでもないことだ!」と声を荒げると、全く別の意味合いになります。謙遜や感謝への返礼として使うときは、「とんでもないです」と丁寧に述べることでポジティブなニュアンスになるので、文脈を誤らないよう気をつけましょう。
7-2. 「ありがとう とんでもないです」ばかりにならないように
日本語はバリエーションが豊富です。感謝を伝えるとき、あるいは感謝に返答するときに、いつも同じ言葉しか使わないとワンパターンな印象を与えてしまうかもしれません。以下のような表現も上手に活用すると、コミュニケーションがより豊かになります。
- 「ありがとうございます、助かります。」
- 「いえいえ、本当にちょっとしたことなので。」
- 「そんな、私なんかたいしたことできなくてすみません。」
- 「恐縮です。お役に立てたなら嬉しいです。」
相手との距離感や状況に応じて使い分けることで、会話がスムーズかつ深みのあるものになります。
8. まとめ:言葉に込める思いやりを大切に
「ありがとう」に対する「とんでもないです」というフレーズには、日本語らしい感謝と謙遜の精神が色濃く反映されています。相手の好意や助けに対して「ありがとう」と素直に感謝し、それに続けて「とんでもないです」と返すやり取りは、お互いを尊重し合う文化の表れといえるでしょう。
ただし、謙遜が行きすぎると相手の感謝を無下にしてしまう可能性もあるため、シチュエーションに合わせて適切な言葉を選び、相手の行為をきちんと受け止めることが大切です。ビジネスや日常生活など、あらゆる場面で使われる「ありがとう」と「とんでもないです」。この2つの言葉を上手に使いこなし、相手との良好な関係を築いてみてください。
言葉はただの道具ではなく、相手への思いやりや気遣いを伝える重要なコミュニケーション手段です。日本語の魅力の一つである「謙譲の美徳」をうまく活用しながら、ぜひ豊かな会話を楽しんでいただければ幸いです。みなさんもぜひ、日常の中で「ありがとう」に対する「とんでもないです」という表現を活かしてみてください。