芥川龍之介の「魔術」は、雨の夜にインド出身の魔術師ミスラと出会った主人公が、魔術の世界に引き込まれていく物語です。主人公は、ミスラから不思議な魔術を教わり、自らもその力を手に入れます。しかし、友人たちと富をめぐる争いの中で、自らの欲望に気付かされます。
この物語は、魔術の神秘とその裏に潜む人間の欲望をテーマにしています。ミスラとの出会いから始まり、主人公が魔術に溺れ、最後にはその誘惑から逃れられないことに気づくまでの過程が描かれます。
このあらすじでは、物語の概要をつかみ、魔術を通じた主人公の成長と葛藤がわかります。魔術の世界と人間の欲望が交錯する、この興味深い物語をぜひお楽しみください。
- 魔術師ミスラとの出会い
- ミスラが披露する魔術の詳細
- 主人公が魔術を使う場面
- 魔術による欲望との葛藤
- 最終的に魔術を使えない理由
「魔術(芥川龍之介)」の超あらすじ(ネタバレあり)
第1章: 魔術との出会い
ある雨の夜、私は大森の竹藪に囲まれた西洋館を訪ねました。その館に住むインド出身の魔術師、マティラム・ミスラに会うためです。ミスラはインド独立運動にも関心を持ち、ハッサン・カンという有名なバラモンの秘法を学んだ人物でした。私は、彼の魔術に強く興味を抱き、魔術を見せてもらう約束をしていたのです。
玄関に入ると、日本人のおばあさんが私を案内してくれました。ミスラの部屋は薄暗く、赤い花模様のテーブルクロスが特徴的でした。彼は私を歓迎し、私は彼の魔術の力を目の当たりにするのを心待ちにしていました。ミスラは、アラビアの精霊「ジン」を使う魔術についても語り、私の期待はますます高まりました。
ミスラは、魔術は催眠術のようなものだと言い、手を使った簡単な術を私に見せてくれると言いました。私が期待して見つめていると、彼は手を動かし、テーブルクロスの花模様を実際の花に変えました。その瞬間、私は魔術の力を実感し、ますます興味を持つようになったのです。
第2章: 初めての魔術体験
ミスラはさらに驚くべき魔術を披露しました。彼はランプをテーブルに置くと、ランプが自然に回り始めました。私は火事になるのではないかと心配しましたが、ミスラは冷静に紅茶を飲んでいます。しばらくしてランプは静かに止まり、私は魔術の神秘に圧倒されました。
次に、ミスラは本棚の本を使って新たな魔術を見せてくれました。本がひらひらと飛び出して、まるでコウモリのように宙を舞い、テーブルに並びます。その中の一冊が、私の膝にすとんと落ちました。それは以前、私がミスラに貸した本であり、彼は礼を言いました。
私はこの瞬間、魔術が単なるトリックではなく、本物の力であることを確信しました。そして、自分でもこの力を手に入れたいと強く思うようになりました。ミスラに魔術を教えてもらうようお願いし、彼は欲を捨てることができれば誰でも使えると答えました。
第3章: 魔術を使う誘惑
魔術を習得して1カ月後、私は銀座のクラブで友人たちと魔術を披露することになりました。雨が降る夜、私たちは暖炉の前で談笑していましたが、友人たちが私に魔術を見せてほしいと言ってきました。私は葉巻を吸いながら、魔術師としての自信を持って立ち上がり、手のひらで燃え盛る石炭を掴みました。
石炭を床に撒き散らすと、無数の金貨が雨のように降り注ぎました。友人たちは驚き、すぐに金貨を囲み、富を手に入れた喜びに浸りました。しかし、私はミスラとの約束を守るために、金貨を再び暖炉に戻そうとしました。しかし、友人たちは猛反対し、この金貨を元手にさらに賭けをしようと提案してきました。
私は友人たちと争いましたが、次第にカルタ勝負をすることになってしまいました。最初は気乗りしませんでしたが、勝負が進むにつれて次第に興奮し、夢中になっていきました。
第4章: 魔術の教訓
カルタの勝負が進む中で、私は自分の欲望に気付きました。この勝負に勝てば、金貨だけでなく友人たちの全財産を手に入れることができるという誘惑に駆られたのです。私は魔術を使って勝利しようとし、その瞬間に自分が欲望に取りつかれていることを感じました。
勝負に勝ち誇った私が、友人たちを見下ろしていると、突然キングのカードが動き出し、にやりと笑いました。その瞬間、ミスラの声が聞こえ、私はクラブではなく、再びミスラの部屋に戻っていました。雨音が竹藪の中を打つ音に変わり、私はたった数分の間に夢の中で魔術に溺れていたことに気づきました。
ミスラは静かに私をたしなめ、私がまだ欲望を捨てる修行ができていないことを悟らせました。私は恥ずかしさと後悔で彼の顔を見られませんでした。欲を捨てられない限り、魔術の力を使う資格がないことを深く理解しました。
「魔術(芥川龍之介)」の感想・レビュー
が魔術師ミスラと出会い、その不思議な力に魅了されていきます。ミスラの行う魔術は、アラビアの精霊「ジン」を思わせるものであり、テーブルクロスの花模様が実際の花になるシーンなど、読者を引き込む神秘的な描写が印象的でした。
物語が進むにつれ、主人公は自分も魔術を使いたいと強く願うようになります。ミスラから欲望を捨てれば魔術が使えるという言葉を受けた主人公は、その誘惑に負けていくのです。特に、銀座のクラブで友人たちに魔術を披露する場面では、石炭が金貨に変わるという衝撃的な出来事が描かれ、読者もその場面に引き込まれます。
しかし、友人たちとの争いの中で、主人公は次第に自分の中の欲望に気付いていきます。金貨を巡るカルタ勝負が白熱する中で、主人公は自らの欲望に屈し、魔術の本質がただの力ではなく、人間の内面と深く結びついていることを理解します。この展開は、物語のクライマックスとして非常に見ごたえがありました。
物語の最後では、主人公が夢から覚めたように、再びミスラの部屋に戻り、すべてが短い夢の中の出来事であったことが明かされます。このシーンは、魔術の世界と現実の境界が曖昧になり、読者に強い印象を与えます。主人公が最終的にミスラに欲望を指摘されるシーンは、物語の教訓として重要な位置を占めています。
全体を通して、「魔術」は人間の欲望の恐ろしさと、それに対抗するための精神的な強さを考えさせられる作品です。ミスラと主人公の関係を通して描かれるテーマは、シンプルながらも深く、読者に多くのことを考えさせます。
まとめ:「魔術(芥川龍之介)」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 主人公はミスラに魔術を見せてもらう約束をする
- ミスラは魔術を催眠術だと説明する
- 主人公は魔術に魅了され、自分でも使いたいと思う
- ミスラは欲望を捨てれば魔術が使えると言う
- 銀座のクラブで主人公が魔術を披露する
- 友人たちは金貨に対する欲望をあらわにする
- 主人公は友人たちと金貨を巡り争う
- 主人公は自分の欲望に気付く
- 魔術は欲望に取り憑かれた者には使えない
- ミスラは主人公に欲を捨てるよう警告する