「去年の冬、きみと別れ」の超あらすじ(ネタバレあり)

『去年の冬、きみと別れ』は、フリーライターの耶雲恭介が、カメラマン木原坂勇作の起こした火災事件に迫る物語です。木原坂の自宅で盲目の女性モデルが焼死した事件の背後に隠された真実を探ろうとする耶雲は、取材を重ねる中で事件の深い闇へと引き込まれていきます。彼の婚約者である百合子の失踪をきっかけに、物語は一気に緊迫感を増し、やがて耶雲の復讐計画が明かされます。

この作品では、表面的な事件の真相だけでなく、登場人物たちの複雑な人間関係や過去の出来事が絡み合うことで、物語に深みが生まれます。耶雲の正体、彼の過去、そして木原坂一家の秘密が次第に暴かれていく展開は、読者を引き込み、予想を覆す結末に驚かせます。

本記事では、『去年の冬、きみと別れ』のあらすじをネタバレ込みで解説します。事件の背景から、登場人物たちの関係性、耶雲の復讐に至るまでの詳細を知りたい方に最適な内容となっています。

この記事のポイント
  • 耶雲恭介と木原坂勇作の事件の概要
  • 耶雲の婚約者・百合子の失踪とその真相
  • 木原坂一家の過去と事件との関連
  • 耶雲の正体と彼の復讐計画
  • 物語全体のあらすじと結末

「去年の冬、きみと別れ」の超あらすじ(ネタバレあり)

第1章: 記事の序章

耶雲恭介はフリーライターを名乗り、カメラマン木原坂勇作が起こした事件に注目します。木原坂の自宅で行われた撮影中、盲目の女性モデルが焼死するという悲劇的な出来事が起こります。事件は過失致死傷として裁判で決着がついていましたが、耶雲は事件の裏に隠された真実を暴きたいと考えます。将来有望なライターとしての腕を試すためにも、この事件は最適な題材と考え、編集社へ記事の企画を持ち込みます。

編集社では編集長の小林が、既に結論の出ている事件を記事にしても売れないと判断し、難色を示します。しかし耶雲は「事件は故意による殺人だ」と強く主張し、調査を進める意志を固めます。結婚を控える耶雲は、その前に自らの力量を試したい一心で、編集部への説得を続けます。その姿勢に押された小林の上司が承諾し、耶雲は取材を行う許可を得ることに成功します。

取材の対象となる木原坂は、執行猶予中のため身動きは制限されていますが、耶雲に対しては意外と協力的です。彼への取材を重ねるうちに、耶雲は木原坂の独特な世界観や作品への執着に興味を抱き、ますます彼の過去や人となりを探りたくなります。木原坂の言動や表情からは、事件の背景に隠された何か大きな秘密がありそうだと感じさせられます。

第2章: 取材の進展と罠

耶雲は木原坂だけでなく、その姉や周囲の関係者にも広く取材を行います。木原坂の家庭環境について探る中で、彼が幼い頃に父親が何者かに刺殺されていたという過去が明らかになります。さらに、木原坂とその姉は父親から虐待を受けていたことも判明します。二人は過酷な幼少期を送り、姉弟が父親を殺害したのではないかと疑われたこともありました。しかし、刺し傷の特徴から第三者の犯行の可能性が高いとされ、その真相は闇に葬られていました。

取材に夢中になるあまり、耶雲は婚約者である百合子との関係をおろそかにしてしまいます。百合子は耶雲の関心が自分よりも事件に向いていることに不安を感じ、二人の関係は次第にぎくしゃくし始めます。ついには、百合子が働くカフェで二人は口論となり、その様子が木原坂によって目撃されます。木原坂は、人のものを自分のものにしたがるという独特の性格を持ち、耶雲と百合子の関係に興味を持ち始めます。

木原坂の興味は次第に百合子へと向けられ、耶雲はそのことに全く気づかず、取材に没頭し続けます。木原坂の姉や周囲の知人から事件の核心に迫ろうとする耶雲でしたが、それがやがて自身と百合子に思いもよらない危険を呼び寄せることになります。

第3章: 百合子の失踪と二度目の事件

ある日、突然百合子が失踪します。彼女のSNSの書き込みや、木原坂の人を欲する性格を思い出した耶雲は、百合子が木原坂に誘拐されたと確信します。耶雲は百合子を救うために木原坂の自宅兼スタジオへ急行します。その連絡を受けた小林も現場に駆けつけますが、二人が到着した時、既に木原坂の自宅は炎に包まれていました。燃え盛る火の中、百合子が囚われており、その様子を無我夢中でカメラに収める木原坂の姿が見えました。

木原坂は現行犯で逮捕され、百合子の遺体は損傷が激しく、本人だと断定するのは難しい状況でした。しかし、耶雲に宛てられた「愛してる」と書かれた手帳が遺留品として見つかり、彼女が百合子であると推測されます。耶雲は百合子を助けられなかったことで打ちひしがれ、絶望に打ちのめされます。一方、事件の一部始終に立ち会った小林は、耶雲の行動や発言に疑念を抱き、独自に彼の過去について調査を開始します。

小林の調査によって明らかになったのは、耶雲の正体や彼の過去に関する驚くべき事実でした。耶雲はフリーライターという立場や名前を偽っており、全ての行動が計画されたものだったのです。この事実は、物語全体を大きく覆すものでした。

第4章: 明かされる真相

木原坂が逮捕されてから数日後、彼のもとに1冊の本が届けられます。それは耶雲が書いたものであり、内容は彼の復讐計画そのものでした。耶雲恭介という名前は偽名であり、フリーライターという肩書きもすべて嘘でした。本来の彼は、木原坂の最初の被害者である吉岡亜希子の恋人で、彼女の死の真相を暴き、復讐するために動いていたのです。

耶雲は亜希子と恋人同士で、非常に仲の良い関係でした。しかし、亜希子は耶雲の将来のことを考え、自分が彼の人生の妨げになるのではないかと心配し、別れを選びます。その後、亜希子が焼死する事件に巻き込まれたことを知った耶雲は、事件を調べ始め、木原坂の姉にたどり着きます。そして、全てを知った耶雲は復讐の計画を立てることを決意します。

百合子は耶雲の恋人というのも偽りであり、復讐のためにネットで知り合い、計画的に協力関係を築いた相手でした。百合子が木原坂に誘拐されたのも耶雲の計画通りで、彼は木原坂の姉を誘拐し、木原坂の家に連れていく手はずを整えます。そして、燃え盛る火の中で百合子に見せかけて殺されたのは、実は木原坂の姉だったのです。こうして耶雲の復讐は見事に成功し、全ての計画は完遂されました。

「去年の冬、きみと別れ」の感想・レビュー

『去年の冬、きみと別れ』は、単なる事件の解決物語ではなく、登場人物たちの心理や人間関係が複雑に絡み合うストーリーが魅力的です。フリーライターの耶雲恭介がカメラマンの木原坂勇作の起こした事件に迫る過程で、二人の間に見え隠れする緊張感と、彼らを取り巻く人々の過去が丁寧に描かれています。事件の裏に隠された真実が徐々に明らかになることで、物語は大きなうねりを見せ、読み手の想像を超える展開が待っています。

物語の中で特に印象的なのは、耶雲が取材にのめり込み、婚約者である百合子との関係が疎遠になっていく様子です。この段階で物語はミステリーの色が濃くなり、耶雲の焦りや木原坂の不気味なまでの興味が絡み合い、サスペンスの要素を強くしています。百合子の失踪と木原坂の現行犯逮捕という急転直下の展開は、読者の心を掴み離しません。

さらに、物語の後半で明らかになる耶雲の正体と復讐の動機は衝撃的です。フリーライターという立場も名前も偽りであり、すべてが復讐のための入念な計画だったという展開は、まるでパズルが完成するような爽快感があります。耶雲が最初の被害者・吉岡亜希子の恋人であり、彼女の死をきっかけに木原坂への復讐を決意したことが分かると、全ての出来事が一本の線で繋がります。

また、百合子の役割についても非常に興味深い点があります。彼女は耶雲の婚約者と見せかけていましたが、実際は復讐のための協力者であり、木原坂の姉と入れ替わるという大胆な計画の一部となります。この入れ替わりによって真犯人が百合子ではなく木原坂の姉であったことが明らかになる瞬間は、物語の最高潮です。

全体として『去年の冬、きみと別れ』は、ミステリーとサスペンスが見事に融合した作品です。人間の心の闇や執念、そして復讐というテーマが巧みに描かれており、読後に深い余韻を残します。物語が持つ重厚な人間ドラマと、思いもよらない結末への流れに、最後まで引き込まれること間違いありません。

まとめ:「去年の冬、きみと別れ」の超あらすじ(ネタバレあり)

上記をまとめます。

  • 耶雲恭介はフリーライターを名乗り、事件を取材している。
  • 木原坂勇作はカメラマンで、自宅の火災でモデルが焼死した。
  • 編集長の小林は最初、記事化に難色を示した。
  • 木原坂の姉や周囲の人々も取材対象となる。
  • 木原坂は幼少期、父親から虐待を受けていた。
  • 百合子は耶雲の婚約者だが失踪する。
  • 百合子の失踪事件で、木原坂は逮捕される。
  • 耶雲は木原坂の最初の被害者・亜希子の恋人だった。
  • 耶雲の正体や動機は全て復讐のためだった。
  • 百合子は木原坂の姉と入れ替わり、復讐の計画が遂行された。