『聖の青春』は、村山聖という将棋棋士の波乱に満ちた人生を描いた作品です。彼は幼いころから病気と戦いながらも、将棋に全てを捧げ、その才能を開花させました。村山は西の怪童と呼ばれ、東の天才・羽生善治との対局を通じて、その名を将棋界に刻んでいきます。
物語は、村山聖の生い立ちや、弟弟子・江川貢や師匠・森信雄との絆、そして病と闘いながらも将棋に挑み続ける姿が描かれます。彼の人生は苦難に満ちていましたが、常に前向きに挑戦し続けました。
村山の最期には、彼の家族や仲間が寄り添い、将棋への情熱が消えることはありませんでした。彼の人生は、多くの人々に深い感動を与え続けています。
- 村山聖の生い立ちと将棋との出会い
- 羽生善治との初対局のエピソード
- 弟弟子・江川貢との関係
- 病と戦いながらの将棋への情熱
- 村山聖の最期とその後の影響
「聖の青春」の超あらすじ(ネタバレあり)
村山聖の将棋との出会いと才能の開花
村山聖が将棋と出会ったのは、5歳のときに腎臓病のネフローゼを患い、広島市民病院で長期入院していた時です。彼の父、村山伸一が病室に将棋盤を持ち込み、将棋のルールを教えたことがきっかけでした。これが聖の人生を大きく変える出来事となり、将棋への情熱を抱くようになりました。
母親のトミ子は、息子の将棋に対する異常なほどの熱意と才能に気づき、大阪の将棋の師範である森信雄に相談し、弟子入りを頼み込みました。森は村山聖の才能を瞬く間に認め、彼を指導していきます。村山はその後、師匠を超える勢いで昇進し、1994年には七段に昇進しました。
その年、東京では羽生善治が若干24歳で5つのタイトルを保持する大偉業を達成しました。将棋界では西の怪童と呼ばれた村山聖と、東の天才とされた羽生善治が初めて関西将棋会館で対局し、村山は羽生に圧倒されました。この対局を機に村山は東京進出を決意し、さらに高みを目指すことを誓いました。
弟子と師匠の絆と試練
村山聖には、同じ森信雄門下で将棋の道を歩んでいた弟弟子、江川貢がいました。彼もまた、将棋に情熱を燃やす天才と期待されていましたが、奨励会での昇段が思うようにいかず、年齢制限を前に引退の危機に直面していました。久しぶりに再会した村山聖は、江川に稽古をつけますが、彼は三段リーグでの戦いに敗れてしまいます。
その後、森や江川と共にスナックで食事をした際、江川は引退を表明しました。村山聖はこのことにショックを受け、酒に酔った勢いで江川を「負け犬」と呼んでしまいます。この言葉に怒った江川と殴り合いのけんかに発展しますが、師匠の森信雄が仲裁に入り、彼らを静めました。
その後、村山聖は体調の異変に襲われ、森が彼を病院に連れて行きます。村山は自分の時間が限られていることを感じつつ、江川との絆を取り戻したいと涙を流します。師匠の森は、村山を優しく包み込むように頭を撫で、弟弟子との和解を促しました。
病と戦いながらの挑戦
1997年、村山聖は都内の大学病院で検査を受け、悪性のぼうこうガンと診断されました。しかし、彼は手術を拒否し、将棋に人生を捧げる決意を固めます。その年、東北の温泉旅館で村山は再び羽生善治と対局を果たします。この対局は、村山にとって特別なもので、病と闘う中で彼の生きる意味を確認する場でもありました。
対局室には夕陽が差し込み、美しい光と影がコントラストを描く中で、羽生は「負けました」と宣言しました。羽生は村山に6勝5敗という互角の成績で、互いに尊敬し合うライバル関係にありました。この対局後、村山と羽生は他の棋士仲間が開いたパーティーを抜け出し、静かな居酒屋でお互いの夢を語り合います。
村山聖は羽生に、自分の夢は名人になり将棋を引退して、のんびりと暮らすこと、そして素晴らしい恋愛をして結婚することだと打ち明けました。一方、羽生も村山との対局に悔しさを感じながらも、村山と共に将棋の世界を旅して、誰も見たことのない景色を一緒に見たいと願っていました。
村山聖の最期とその後
1998年、村山聖は広島市民病院のベッドで最後の時を迎えました。彼の家族である父・伸一と母・トミ子がそばにいる中、彼は苦しみながらも「2七銀」という最後の言葉を残しました。彼の意識は徐々に薄れ、ついにその短い生涯に幕を閉じました。
村山聖の訃報を聞いた森信雄は、急いで村山家を訪れましたが、彼の遺体を前にして顔にかけられた布を取ることができませんでした。村山聖の遺志を継ぐ形で、将棋世界の編集部では追悼号の原稿がまとめられ、これを江川貢が印刷所に届けに行くことになります。
原稿を持った江川が自転車に乗って夕暮れの道を進むと、彼は遠くに村山聖の姿を見たような気がしましたが、振り返ることはなくそのまま前へ進みました。村山聖の死後も、彼の存在は人々の心に深く刻まれ続けるのです。
「聖の青春」の感想・レビュー
『聖の青春』は、村山聖という人物の生き様を深く描いた感動的な物語です。彼の人生は幼少期から病気と共にあり、その病が彼を将棋へと導いたという点が非常に印象的です。父親が将棋盤を持ち込み、母親がその才能に気づき、大阪の森信雄の元へ弟子入りするまでの過程が、村山の成長を強く支えたことがわかります。彼の努力と才能が融合し、七段に昇進するまでの道のりは感慨深いものがあります。
村山が羽生善治との初対局に挑む場面では、彼の内に秘めた情熱と、羽生の圧倒的な強さに打ちのめされた姿が描かれており、将棋界の厳しさを痛感します。この敗北が村山に新たな決意を与え、東京進出を決意させたというエピソードは、彼の強い意志を象徴しています。
また、弟弟子である江川貢との関係は、人間関係の複雑さや絆を感じさせます。将棋の世界で生き残ることができずに引退を決意した江川に対する村山の複雑な感情が、けんかにまで発展する場面は、彼の不器用な優しさを感じます。師匠である森信雄が彼らの仲を取り持ち、村山を優しく包み込むシーンは、心温まるものでした。
村山が病と闘いながらも、再び羽生善治との対局に挑む姿は感動的です。病に負けることなく将棋を続ける姿勢や、羽生との深い友情が、物語のハイライトとして描かれています。特に彼が語る将棋と人生に対する夢は、読者の心を強く揺さぶります。
最期の瞬間まで将棋を指し続けた村山聖の姿と、彼を見送る人々の思いが、彼の存在の大きさを感じさせます。彼の生涯は短かったものの、将棋界に与えた影響は計り知れず、彼を知る人々の心に深く刻まれ続けるでしょう。
まとめ:「聖の青春」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 村山聖は幼少期に病気を患う
- 父親が将棋を教えたことがきっかけで才能が開花
- 森信雄に弟子入りし、大阪で将棋を学ぶ
- 羽生善治と初対局するが敗北
- 弟弟子の江川貢との複雑な関係が描かれる
- 酒席での衝突があり、後に和解を求める
- 村山聖はぼうこうガンと診断される
- 羽生善治と再び対局し、村山が勝利
- 村山の最期には家族が寄り添う
- 江川貢が村山の追悼号を印刷所に届ける