『太陽の塔』は、大学生の「私」が恋人である水尾さんとの別れをきっかけに、彼女への執着と奇妙な日常を描く物語です。
彼女をストーキングするうちに現れたライバルの遠藤との対立や、友人たちと繰り広げる「ええじゃないか騒動」など、個性的な登場人物たちが織り成すドラマが展開されます。太陽の塔を巡る彼女との思い出と、夢の中での不思議な体験が物語を一層深く彩ります。
- 主人公と水尾さんの関係
- 四天王と奇妙な日常
- 遠藤との対立と奇妙な縁
- 太陽の塔に対する特別な思い
- クリスマスの「ええじゃないか騒動」
「太陽の塔」の超あらすじ(ネタバレあり)
主人公「私」は、大学5回生という煮え切らない生活を送っていました。彼は3回生の頃、知的で可愛らしく、どこか猫のような魅力を持つ水尾さんという女性と付き合っていました。しかし、突然の別れが訪れます。彼女から一方的に振られた「私」は、紳士的に別れを受け入れたかのように見えましたが、内心は納得できませんでした。「なぜ完璧な自分を彼女が拒否したのか」を解明するため、彼は水尾さんを観察し続け、次第にストーカーのような行動に出ます。
ある日、いつものように水尾さんを尾行していると、遠藤という男に咎められ、「これ以上彼女に付きまとったら警察を呼ぶ」と警告されます。遠藤も実は水尾さんのファンで、彼女の映画サークル仲間でした。遠藤と「私」はお互いに敵視し合い、嫌がらせを続けるようになります。
主人公には個性的な友人が3人います。緻密な頭脳を持つ法学部生の飾磨、巨体に繊細な心を持つ高薮、そして世間に怨念を抱く井戸です。この3人と主人公は「四天王」と名乗り、日々奇妙な活動を行っています。例えば、カップルの間に無理やり座ったり、バレンタインを罵倒したりと、普通の人には理解できない行動ばかりです。クリスマスが近づくと、「ええじゃないか騒動」を企画し、さらに遠藤との関係も複雑に絡み合っていきます。
ある夜、主人公は遠藤に助けられ、彼の部屋で水尾さんが太陽の塔に向かう映像を見せられます。遠藤は「なぜ彼女が太陽の塔に執着するのか教えてほしい」と言いますが、主人公は答えを持っていませんでした。
主人公は幼少期に家族とともに万博公園近くに住んでおり、太陽の塔を日常的に目にして育ちました。幼い頃の彼にとって、太陽の塔は巨大で恐ろしい存在でしたが、大人になって彼女とその場所を訪れることで、新たな感情が芽生えます。水尾さんは太陽の塔に強い感動を覚え、関連する本を読み漁るほど熱中し、主人公の太陽の塔への思いを超えていきました。
ある夜、悪夢で目が覚めた主人公は不思議な電車に乗り、夢の中の太陽の塔へと向かいます。そこで彼女がかつて主人公からもらった招き猫や本棚を見つけ、彼女の夢の中に迷い込んだことに気づきます。遠藤もその場所に現れ、主人公は遠藤に恋の助言をしてしまいます。
主人公は遠藤に対して助言したことを後悔し、再び自分を律することを誓います。クリスマスイブ、遠藤が水尾さんとデートの約束をしていることを知り嫉妬した主人公は、「ええじゃないか騒動」を引き起こすことを決意。騒動は町中に広がり、主人公はその混乱の中で水尾さんを見つけますが、彼女も「ええじゃないか」の波に飲まれて消えていきます。
騒動の後、主人公は一人で彼女との思い出を振り返り、太陽の塔の横で彼女の姿を追い求めながら歩き続けるのでした。
「太陽の塔」の感想・レビュー
『太陽の塔』は、一見シンプルな大学生活の物語ながら、その中に織り込まれた主人公の感情と行動が非常に魅力的です。主人公「私」は、振られた水尾さんへの未練を捨てきれず、彼女の行動を観察し続けます。水尾さんという女性はただ美しいだけでなく、奇想天外で魅力的な存在であり、彼女の行動はどこか猫のような気まぐれさを感じさせます。遠藤というライバルの登場により、主人公の行動はさらにエスカレートし、嫌がらせの応酬が繰り広げられるのですが、そこには滑稽さと哀愁が同居しています。
四天王のメンバーである飾磨、高薮、井戸も個性的で、彼らが行う奇妙な行動は物語にユーモアを与えます。特に、「ええじゃないか騒動」は、社会に対する反抗心や、彼らの青春の一瞬の輝きが詰まっており、読む者を引き込みます。彼らが繰り広げる非日常的な行動は、主人公が水尾さんへの思いを断ち切れないでいることを象徴しているようにも感じます。
物語の中心にある太陽の塔は、主人公と水尾さんの関係の象徴です。幼い頃からの憧れの対象であり、彼女との思い出の場所でもある太陽の塔は、二人の関係がいかに深く結びついていたかを物語っています。最終的に彼女と再会することは叶いませんが、主人公はその記憶を胸に、自分自身と向き合いながら進んでいく姿が印象的です。太陽の塔に向かう主人公の姿は、彼自身の再生と希望を象徴しているようで、読後感に強い余韻を残します。
まとめ:「太陽の塔」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 主人公は水尾さんに振られ、彼女に執着する
- 遠藤も水尾さんのストーカーであり、主人公のライバル
- 四天王は奇妙な行動を共にする友人グループ
- 主人公と遠藤はお互いに嫌がらせを繰り返す
- 太陽の塔は主人公と水尾さんの共通の思い出の場所
- 主人公は太陽の塔に特別な感情を抱いている
- 遠藤は水尾さんとの関係を深めたいと願っている
- クリスマスイブに「ええじゃないか騒動」を起こす
- 騒動の中で水尾さんの姿を見失う
- 最後に主人公は太陽の塔に向かって歩き出す