「世界から猫が消えたなら」は、余命宣告を受けた主人公が悪魔と取引し、世界から大切なものを次々と消していく物語です。
電話や映画、時間が消える中で、主人公は失うことの意味と自分の人生を見つめ直します。最終的に愛猫キャベツを消すか、自分の命を諦めるかという選択を迫られた主人公は、家族の愛と和解を通して人生の答えを見つけていきます。
- 主人公が余命宣告を受ける理由と経緯
- 悪魔との取引で世界から消されるものの順番と意味
- 主人公と家族や友人との関係と過去の思い出
- 愛猫キャベツとの深い絆と別れの決断
- 最後の選択で得られた主人公の心の変化
「世界から猫が消えたなら」の超あらすじ(ネタバレあり)
主人公の「僕」は、4年前に母を亡くし、キャベツという名前の猫と静かな日々を過ごしていました。しかしある日、風邪をこじらせて病院に行ったところ、医師から脳腫瘍が見つかり、余命がわずかであることを宣告されます。突然の死の知らせに混乱しながら家に戻ると、そこに自分と同じ顔をした悪魔が現れました。悪魔は「明日、あなたは死にます」と告げ、取引を持ちかけてきます。その内容は、「世界から何かをひとつ消す代わりに、1日の命を得る」というものでした。悪魔が決めた最初に消すものは「電話」でした。主人公は元恋人に電話をかけ、明日会う約束をしますが、その後、電話は世界から消されてしまいます。彼女と映画館での待ち合わせをし、かつての楽しい日々を思い出します。
次の日、世界から映画が消えたことで、主人公は心にぽっかりと穴が開いたような感覚に陥ります。しかし、命を得るためには仕方ないと考え、映画の消失を受け入れます。彼は映画好きで、映画館で働く元恋人と毎日のように映画を観ていた思い出が蘇ります。人生最後の一本を決めるために、親友のツタヤと話し合い、チャップリンの「ライムライト」を選びます。しかし、映画が消えたことで、パッケージを開けても中身は空でした。真っ白なスクリーンを前に、主人公は自身の人生の映画を想像し、過去の記憶が走馬灯のように駆け巡ります。母の言葉や失ったものの大切さに気づき、心が深く揺さぶられます。
次に消されたのは「時間」でした。時計が消え、世界から時間の概念がなくなります。主人公は時計職人の父との確執を思い出し、心を痛めます。この時、愛猫キャベツが悪魔の力で人間の言葉を話せるようになり、時代劇風の口調で語りかけてきます。キャベツと散歩しながら、主人公は母がキャベツをどれだけ愛していたかを感じ、家族旅行の思い出を語り合います。母は病気の中、家族をつなぎとめるために旅行を企画し、最後の時間を使っていました。母の愛を感じた主人公は、胸が締め付けられるような思いで涙を流しますが、キャベツはいつものように寄り添ってくれます。悪魔が再び現れ、次に消すものとして「猫」を提案します。
主人公は、自分の命を延ばすために猫の命を消すか、それとも自らの死を受け入れるかという選択を迫られます。決断ができないまま、彼女から母が残した手紙を渡されます。手紙には、母が自分のためにやりたかったことが綴られ、父との和解を願う言葉も記されていました。母の深い愛情を感じ、涙する主人公にキャベツは「猫を消せばいい」と語りかけますが、主人公はキャベツを失うことができないと決意します。自分の死を受け入れた彼は、遺書を書き、母の願いを果たすために父との和解を決意します。郵便配達員の制服に身を包み、懐かしい風景を通り抜けながら実家へと向かう姿が描かれます。
「世界から猫が消えたなら」の感想・レビュー
「世界から猫が消えたなら」は、主人公が自身の命と引き換えに大切なものを次々と失っていくことで、そのものが持つ本当の意味と価値に気づく感動の物語です。物語の始まりで主人公が脳腫瘍と診断され、余命宣告を受けたシーンは、読者にとっても衝撃的です。そこに現れる悪魔は、主人公の選択肢を奪いながらも新たな気づきを与えていきます。最初に消された電話を通じて、主人公は元恋人とのつながりを最後に確認し、彼女との約束が守られなくなることで、電話の持つ重要性を再認識します。
映画が消えるエピソードでは、主人公の映画への愛とそれを共有していた人々との絆が描かれ、スクリーンを前にして走馬灯のように蘇る記憶が胸を打ちます。親友のツタヤとのやりとりや、映画が消えた世界での彼女との最後の時間は、映画がただの娯楽ではなく、心の支えであったことを強く感じさせます。
時間が消えることで、主人公は父との確執や母との思い出に向き合うことになります。キャベツが人間の言葉を話せるようになることで、彼は母の本当の思いを知り、家族の愛に気づきます。特に母がキャベツと過ごした時間や、家族旅行の本当の目的が明かされるシーンは、読者に家族の大切さを再確認させる重要な場面です。
最終的に、主人公は自分の命を延ばすためにキャベツを消すか、自らの命を選ぶかという究極の選択を迫られます。母の手紙やキャベツの言葉を通じて、彼は自らの死を受け入れる決意を固めます。この決断は、ただの自己犠牲ではなく、母の愛や家族との絆を守るための選択であり、その深い感動が物語のラストを飾ります。最終的に、主人公が父との和解を果たし、母の願いを叶えようとする姿には、家族の愛の強さと人間の成長が見事に描かれています。
まとめ:「世界から猫が消えたなら」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 主人公が余命わずかの脳腫瘍と診断される
- 悪魔が現れ、取引として世界から何かを消す提案をする
- 最初に電話が消え、元恋人との最後の会話をする
- 映画が消え、親友ツタヤと選んだ最後の映画を見ることができない
- 時計が消え、父との関係を振り返り、時間の重要性を再認識する
- キャベツが人間の言葉を話せるようになり、母との思い出を語る
- 母が家族のために尽くした最後の旅行の真実を知る
- 悪魔がキャベツを消す提案をし、主人公は苦悩する
- 母の手紙を読み、深い愛と家族の絆を再確認する
- 自らの命を受け入れ、父との和解に向けて行動する