「異形の山」は、冬の北岳を舞台に、謎の巨大生物「雪男」とそれに関わる人々の運命を描いたサスペンスです。
大学生、ハンター、救助隊員たちが、それぞれの思惑で危険な山に挑む中、次々と不可解な事件が発生します。やがて、雪男の正体が中国から逃げてきた希少種「白猩猩」であることが判明。彼らの運命が交錯し、最終的に保護されるまでの緊迫した展開が描かれています。
ネタバレ注意の詳細なあらすじもご紹介します。
- 「異形の山」の物語の概要
- 北岳を舞台としたサスペンスの設定
- 雪男と呼ばれる巨大生物の正体
- 登場人物たちの異なる思惑
- 物語の結末と白猩猩の運命
「異形の山」の超あらすじ(ネタバレあり)
東都大学山岳部の安西大輔と大葉啓二は、厳冬期に北岳での登山を決行しました。寒さが厳しい中、夜空を見上げると、突然大きな火の玉が空を横切りました。彼らはその光景を驚きつつも、カメラで撮影しました。その動画はインターネット上で話題となり、多くの人が「これは一体何だろう?」と興味を持ちました。
その後、登山写真家の斉藤直樹が、北岳で白い毛に覆われた巨大な生物を撮影しました。その写真はインターネット上で拡散され、「宇宙からの来訪者か?」とさらに注目を集めました。同じ頃、北岳の山小屋である白根御池小屋と池山御池小屋が荒らされ、食糧が持ち去られる事件が発生しました。
地元の山岳救助隊員である進藤諒太と、彼の相棒である山岳救助犬のリキは、事件の調査に向かいました。現場に到着した進藤とリキは、雪の上に大きな足跡と、白い毛玉を見つけます。「一体、これは何なんだ?」と進藤は不安を感じます。
さらに、テントで宿泊していた登山客が何者かに襲われて怪我をするという事件も発生しました。この事態を受けて、南アルプス警察署で対策会議が開かれることになりました。
南アルプス警察署で開かれた対策会議には、県の防災危機管理課や観光文化政策課の職員たちが集まりました。防災危機管理課の田中課長は、「危険な生物がいるなら、すぐにでも排除しなければならない」と主張しました。一方、観光文化政策課の佐藤課長は、「この生物を『キタゴン』と名付けて、観光資源として活用するのはどうだろうか」と提案しました。
しかし、この無責任とも言える意見交換に、山岳救助隊員の星野夏実は耐えられなくなり、会議室を飛び出しました。彼女は共感覚という特別な感覚を持っており、謎の巨大生物が恐怖や孤独を感じているのではないかと心配になったのです。
その頃、入山規制が敷かれた北岳に、密かに入ろうとする者たちがいました。彼らは、「雪男を仕留めて有名になりたい」と考えるハンターの川辺三郎と義弟の小尾達明、そしてYouTuberの芝山宏太でした。芝山は、落ち込み気味の自分のチャンネル登録者数を回復させるため、雪男のスクープを狙っていたのです。
広河原山荘の管理人で、狩猟免許を持つ滝沢謙一は、進藤諒太とリキと共に、北岳での調査に向かいました。彼らは吹雪から避難するため、北岳山荘の冬期小屋に入ることにしました。そこで、彼らは意識朦朧とした外国人男性を発見しました。その男性は、明らかにサイズの合っていない登山服を着ていました。普段は人に対して吠えないリキが、この男性に対して唸り声をあげたことで、進藤は彼に不信感を抱きます。
その頃、滝沢と同じ猟友会に所属するハンターの川辺三郎と義弟の小尾達明は、北岳登山口付近の駐車場に到着していました。彼らは、滝沢が雪男の調査のために猟銃を持って北岳に入ったことを知り、「自分たちも雪男を仕留めて有名になろう」と考え、禁猟区であることを承知の上で猟銃を持ち込んでいました。
しかし、川辺と小尾は高山での登山経験がなく、強風に煽られながら岩壁を進むのに苦労しました。川辺が杭にしがみついて必死に耐えていると、小尾が突然棒立ちになり、川辺の背後を見つめます。振り向いた川辺が目にしたのは、白い毛むくじゃらで赤い顔をした巨大な生物、雪男でした。
川辺は小尾に銃を構えるよう促しましたが、小尾の撃った弾は当たりません。怒った雪男は小尾に襲いかかり、彼を谷底へと投げ飛ばしてしまったのです。
芝山宏太は、東都大学に通う4年生で、人気のYouTuberです。しかし、最近はネタが尽き、チャンネル登録者数が減少していました。就職活動もする気になれず、悶々とした日々を送っていました。そんな折、彼は大学の同級生である安西大輔と大葉啓二から、北岳で偶然撮影した動画が再生数を伸ばしていること、そして雪男の目撃情報があることを聞き出しました。これをきっかけに、芝山は再生数を稼ぐために北岳へ向かう決意をします。
川辺と小尾が開けっ放しにしていた登山口から、芝山はこっそり入山しました。しかし、冬の北岳は想像以上に過酷で、道のりは困難を極めました。途中で進藤たちに出会い、雪崩の危険性を指摘され一度は下山を約束しますが、どうしても諦めきれません。
その後、安西から電話を受け、例の火球が無許可で飛行していた飛行機の墜落によるものだと知った芝山は、雪男をスクープするために山頂を目指しました。しかし、その途中で大きな雪崩に巻き込まれてしまいました。
進藤諒太とリキ、滝沢謙一は、遭難者を捜索している途中で、男性の遺体を発見しました。その遺体は、登山服がはぎ取られており、進藤は以前に見た外国人男性が犯人だと直感しました。
その頃、山梨県警では、山岳救助隊副隊長の杉坂知幸が、中国から来たジェーン・チャオという女性と面会していました。ジェーンはチベット奥地の特別保護区で、絶滅危惧種である大型類人猿「白猩猩」の研究をしている科学者でした。彼女は、保護区から違法に捕獲された白猩猩のつがいが飛行機でロシアに運ばれる途中で消息を絶ったと話しました。
つまり、北岳で目撃された雪男の正体は、この白猩猩だったのです。杉坂とジェーンは、ヘリコプターで北岳に向かうことにしました。
一方、北岳では、谷底に落ちた小尾が星野夏実たちに救助されていました。小尾から川辺が雪男を追っていることを聞いた夏実たちは、急いで川辺の跡を追いました。また、進藤とリキ、滝沢も川辺の跡を追っていました。
ついに川辺を追いつめた夏実たちは、彼が猟銃を構えている先に、白猩猩を見つけました。夏実たちは川辺に発砲をやめるよう制止しましたが、川辺は聞き入れず、引き金を引きました。しかし、その瞬間、滝沢が川辺を妨害し、弾は外れました。
怒った白猩猩は川辺に襲いかかろうとしましたが、リキが彼らを止めました。川辺は再び発砲しようとしましたが、滝沢がそれを阻止し、最終的に救助隊の武闘派隊員である神崎静奈に制圧されました。
ジェーンは白猩猩に呼びかけ、再会を喜びました。白猩猩は「オーガスト」という名前のオスで、非常に知能が高く、優しい心を持った生物でした。さらに、オーガストのパートナーであるエイプリルも無事に保護され、彼女は二頭の間に生まれた子供を抱えていました。
この事件は、芝山宏太が雪崩から奇跡的に助かり、その後、彼が動画を配信したことで世間に広まりました。白猩猩たちは、その後、スイスの研究施設で安全に保護されることとなり、星野夏実はほっと安堵しました。
これで、事件は無事に解決し、北岳に再び平穏が戻りました。
「異形の山」の感想・レビュー
「異形の山」は、冬の北岳という厳しい自然環境を舞台に、謎の巨大生物「雪男」を巡るサスペンスが展開される物語です。登場人物たちの動機や行動がリアルに描かれており、特に大学生YouTuberの芝山宏太が再生数を求めて危険な山に挑む姿は、現代の若者の葛藤や野心を映し出しているように感じました。彼の無謀な行動が引き起こす悲劇には緊張感があり、読み手を引き込みます。
また、ハンターの川辺三郎と義弟の小尾達明が、名声を求めて禁猟区である北岳に入り、雪男を仕留めようとする場面では、自然の厳しさと人間の欲望がぶつかり合うシーンが印象的でした。彼らの結末は、自然を軽視することの危険性を強く感じさせます。
山岳救助隊員の進藤諒太とリキ、そして滝沢謙一が、雪男の正体を追い求める姿もまた、命をかけた救助活動の緊迫感が伝わってきました。特に進藤が謎の外国人男性に不信感を抱く場面や、白猩猩の正体が明らかになる瞬間は、物語の核心に迫る重要なシーンであり、読者の興味を引きつけます。
そして、物語のクライマックスで、雪男の正体が中国から逃れてきた希少種「白猩猩」であることが判明する展開には驚きました。ジェーン・チャオの登場と彼女が白猩猩を保護しようとする姿勢は、人間と自然の共存について深く考えさせられるものでした。
最後に、芝山宏太が配信した動画によって事件が公にされることで、物語は一気に解決へと向かいます。ここでは、現代のメディアの力とその影響力についても考えさせられました。
全体を通して、「異形の山」は、自然の力と人間の欲望が交錯する中で、命の尊さや人間の責任について考えさせられる深い作品だと感じました。登場人物それぞれの視点から描かれる物語は、最後まで飽きることなく楽しめました。
まとめ:「異形の山」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 冬の北岳を舞台にしたサスペンス
- 謎の巨大生物「雪男」の登場
- 大学生YouTuberが雪男を追う
- ハンターたちが名声を求めて北岳に入山
- 山岳救助隊が事件に関与する
- 謎の外国人男性が登場し不審な行動をとる
- 雪男の正体が希少種「白猩猩」と判明
- 白猩猩の保護を巡る緊迫した展開
- 川辺が白猩猩を狙って発砲するが失敗
- 事件は動画配信で公にされ、解決へ向かう