「さようなら、猫」は、インテリアデザインの夢を挫折した美那が、偶然拾った白猫「ハッピー」との出会いを通じて変わっていく物語です。
自分を見失いがちな彼女は、ハッピーとの絆を深める一方で、裕福な男性ハックとの新たな生活に心が揺れます。しかし、ハッピーを手放す決断に迫られた美那は、最終的にハッピーと共に生きる道を選びます。
猫との生活を通じて、自分自身を見つめ直す姿が描かれた感動的なストーリーです。
- 美那がインテリアデザインの夢を諦めた経緯
- 白猫「ハッピー」との出会いと絆
- 美那がハッピーを手放すか迷う葛藤
- 裕福な男性ハックとの出会いとその影響
- 最終的に美那がハッピーと共に生きる決断をする結末
「さようなら、猫」の超あらすじ(ネタバレあり)
美那(みな)は、東京にあるインテリアデザインの学校に入学しました。彼女は新しい家具のデザインや、未来の住宅の設計図を描くことに情熱を持っていましたが、提出するたびに先生から厳しい評価を受けてしまいます。美那は自分がデザイナーには向いていないと感じ、次第に学校へ行かなくなりました。その代わり、アルバイトをしたり、友人のアオイと夜遅くまで遊んだりする生活を送るようになります。
ある夜、日付が変わる頃、美那は家に帰る途中で奇妙な光景に出くわします。黒いジャージを着た男女が、道端でダンボールに何かを詰め込んでいました。美那が近づくと、それが母猫とその子猫たちだとわかりました。二人は美那に気づくと、慌ててその場から逃げ去ってしまいます。ダンボールの中には、一匹の白い子猫だけが取り残されていました。この子猫は白い毛並みに、しっぽと足の先が黒く、まだ乳離れをしたばかりの小さなオス猫でした。
美那は子猫をそのままにしておけず、自分のアパートに連れ帰ることにしました。彼女の実家でも猫を飼っていましたが、世話はすべて両親がしていたため、彼女自身が猫を育てた経験はありませんでした。それでも、この子猫にキャットフードを与えながら、美那は初めて「自分の猫」ができたという実感を抱きました。
美那は、拾った白い子猫に「ハッピー」という名前をつけました。ある日、友人のアオイと一緒にバーのカウンターでビールを飲んでいる時、彼女は「ハッピー」という名前をアオイに伝えました。しかし、アオイは美那がこれまで学業もバイトも中途半端に放り出してきたことを知っていたため、「美那が飼い主では絶対にハッピーになれない」と断言します。
アオイの言葉にショックを受けた美那は、心を入れ替えてハッピーを幸せにすることを決意しました。彼女は、ピッツェリアでウェイターとして働いていましたが、午後7時から8時に上がれるシフトに変更してもらい、できるだけ早くハッピーのもとに帰れるようにしました。ハッピーは美那にすっかり懐き、家の中を歩くときはいつも彼女の後ろをついてくるようになりました。お風呂やトイレに入る時も、ハッピーはいつもそばにいて、まるで美那を守るかのようでした。
やがて、アオイには「僚(りょう)」という恋人ができ、3人でクラブに行く機会が増えました。しかし、クラブで遊んでいる間も、美那の頭にはハッピーのことが常に浮かんでいました。クラブの音楽や照明、他の客たちの会話が、自分とは無関係に感じられ、早く家に帰ってハッピーと布団に入ってしまいたいと思うようになりました。
最近、付き合いが悪くなった美那のことを心配していたアオイは、美那に「ハック」という男性を紹介します。ハックは、美那と同じインテリアデザイン学校に通っている少し年下の男性で、彼は盛り場に近い高層マンションに住んでいました。彼の部屋は、白とブルーを基調としたインテリアで統一されており、すべてが海外の一流メーカーのものでした。リビングルームだけでも、美那のアパートの倍以上の広さがありました。
ハックは、美那に興味を持ち、彼女をマリンブルーの大きなソファーに招きました。美那は、その豪華さに圧倒され、ハックとの新しい生活を少し想像してしまいます。しかし、その一方で、ハッピーのことが心に引っかかり続けました。彼女は、ハッピーの存在がある限り、ハックとのお泊まりや旅行などのイベントが難しいことに気づきます。美那は今年19歳で、ハッピーが10〜15年の寿命を迎える頃には、自分が34歳になっていることを考えると、その未来がまったく想像できませんでした。
ある日、クラブでのこと。ハックは、美那に「ハッピーをもらってくれる人がいる」と提案します。その相手は、クラブの常連客の一人で、彼が信頼できると話してくれます。しかし、美那はその相手を見たこともなく、どんな人物かも全く知りませんでした。彼女は、ハッピーを誰かに預けることに対して不安を感じ始めます。
過去に見た、黒いジャージを着た不審な二人組のことを思い出し、美那はハッピーの母猫や兄弟たちの安否が気になりだします。もしハッピーを誰かに預けても、その相手がハッピーを大切にしてくれるかどうかが心配でたまりません。電話が鳴り続ける中、美那は最寄り駅からアパートまでの道順を相手に教えるかどうか迷いますが、最後にはそれを放棄してしまいます。
美那は、鳴り続ける電話を無視し、自転車に飛び乗りました。そして、ハッピーを連れてどこか遠くへと逃げ出します。どこに行くのか、何をするのかもわからないまま、美那はただ無我夢中でペダルをこぎます。カゴの中で抗議するように鳴くハッピーをなだめながら、美那は心の中で「大丈夫だよ」とささやきました。
美那はハッピーと共に新しい未来を模索する決意を固めました。どんなに困難な状況でも、ハッピーと一緒にいられることが、彼女にとって何よりも大切なことだと気づいたのです。彼女は、これからの生活がどんなものになるのかはわからないけれど、ハッピーと共に生きる道を選んだのでした。
「さようなら、猫」の感想・レビュー
「さようなら、猫」を読んで、主人公の美那がどのように成長していくかがとても印象的でした。美那はインテリアデザインの夢に挫折し、自分を見失いかけていましたが、偶然拾った白猫「ハッピー」との出会いが、彼女の人生を大きく変えていきます。
最初は荒れた生活を送っていた美那が、ハッピーとの生活を通じて、少しずつ自分自身を取り戻していく様子が描かれており、その過程がとてもリアルで共感できました。特に、ハッピーを幸せにしたいという強い気持ちから、夜遊びや不規則な生活を見直す姿には、心が温かくなりました。
一方で、裕福な男性ハックとの出会いは、美那にとって大きな試練でした。彼の豪華なマンションや贅沢な生活に一瞬心が揺れたものの、ハッピーを手放すことができずに悩む姿がリアルに描かれていました。ハックとの新しい生活を夢見る一方で、ハッピーとの絆が強くなっている美那の葛藤が、物語の緊張感を高めています。
最後に、ハッピーと共に生きる道を選んだ美那の決断は、非常に感動的でした。彼女がハッピーに「大丈夫だよ」とささやくシーンは、彼女自身が自分の人生に対する覚悟を固めた瞬間でもあり、とても心に残りました。ハッピーとの絆が、彼女の人生を救い、成長させたことが強く伝わってきました。
この物語は、猫との生活を通じて、自分自身を見つめ直し、成長していく人間の姿を描いており、誰にとっても大切なテーマが込められていると感じました。ハッピーとの時間が、美那にとってかけがえのないものであり、彼女がそのことに気づいていく過程が非常に感動的でした。
まとめ:「さようなら、猫」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 美那はインテリアデザインの夢を挫折した
- 夜遅くの帰宅途中に子猫を拾った
- 拾った白猫に「ハッピー」と名付けた
- ハッピーとの生活が美那の生き方を変えた
- アオイとの夜遊びから距離を置くようになった
- 裕福な男性ハックと出会い、心が揺れた
- ハックとの新しい生活を考えたが迷った
- ハッピーを手放すかどうか葛藤した
- 最終的にハッピーと共に生きる道を選んだ
- 美那が自分自身を見つめ直す物語である