「ラストは初めから決まっていた」は、岡山大学の文学部生・堂島ことりの心の葛藤と成長を描いた物語です。
失恋のショックを抱えたことりが、アメリカ在住の作家・流山凛子の小説創作講座に参加し、自分の体験を元にした恋愛小説を書き進める過程が描かれます。物語は、失恋の傷から立ち直り、自分の感情に正直に向き合うことりの姿を中心に展開。
涼介という新たな人物との出会いが、彼女の人生を大きく変えていく様子を描き出します。
- 主人公・堂島ことりが失恋から立ち直る過程
- 小説創作講座の内容と講師、流山凛子の役割
- 涼介という人物が物語にどのように関わるか
- ことりが自分の体験を基にした恋愛小説を書く理由
- 物語の展開がことりの成長と感情に焦点を当てていること
「ラストは初めから決まっていた」の超あらすじ(ネタバレあり)
岡山大学文学部の三回生である堂島ことりさんは、最近、付き合っていた男性、真壁時生さんに振られたばかりです。時生さんは「もっと好きな人ができた」と言って、ことりさんとの関係を終わらせました。失恋のショックを引きずりながら、ことりさんは夏季特別講座に参加します。
この講座は小説創作をテーマにしており、講師はアメリカ在住の日本人作家、流山凛子さんです。この講座は岡山大学文学部を対象にしていますが、なぜか経済学部の学生、熊野涼介さんも参加しています。涼介さんは時生さんの友人でもあり、ことりさんは彼が講座にいることを不快に感じます。
講座で出された宿題は、自分の体験をもとにした恋愛小説を書くことです。ことりさんは、自分の「起」の部分として、時生さんとの出会いを描くことにしました。彼との初めての出会いは、小学六年生のとき、母親を亡くしたことりさんが悲しんでいるときに、時生さんがハンカチを差し出してくれた出来事です。その後、岡山大学に入学した際に、二人は再会しました。
講座に提出した「起」の部分を書いた後、くじ引きでペアを組まされることになりました。ペア同士で互いの作品を読むことになり、ことりさんの相手は涼介さんになりました。涼介さんの作品には、彼が子供のころに飼っていた雌の捨て犬が亡くなった悲しみが描かれており、ことりさんはその内容に深く感動し、思わず涙を流してしまいます。
ことりさんは、涼介さんからのアドバイスを受けて、自分の「起」の部分を修正し、「承」の部分を書き進めることにしました。涼介さんのアドバイスによれば、時生さんとの大学での再会のエピソードは「承」に回す方が良いということでした。
凛子先生からは、「起」の部分は新鮮で良いと褒められましたが、「言葉をもっと大切にしなさい。書く前にもっと考えなさい」とのアドバイスも受けました。凛子先生は、司馬遼太郎の「竜馬が行く」の一節を涼介さんに朗読させました。涼介さんは高校時代に演劇部に所属していたため、朗読が非常に上手で、ことりさんはその声に魅了されました。
その後、宿題の「承」の読み合わせが行われました。ことりさんは涼介さんの作品を読みました。涼介さんの「承」は、愛犬を失った後の彼の心情を描いたもので、彼が恋をしなければならなかった経緯が綴られていました。特に、涼介さんの友人であるマカベさんが本命の女性を手に入れるために当て馬として付き合った女性についてのエピソードが含まれており、ことりさんはそれが元彼の時生さんに似ていることに気づき、深いショックを受けました。
涼介さんの「承」を読んでから、ことりさんは混乱しています。彼女は自分の「承」を修正しようと考えました。また、凛子先生から「ここには作者の秘密がない」との指摘を受け、ことりさんは自分の「承」に秘密を加えることに決めました。
ことりさんの秘密は、「ラブソングなんて大嫌い」という感情でした。時生さんに対する憎しみを隠していたことりさんは、実際には時生さんも涼介さんも憎んでいることに気づきます。その憎しみを正直に表現するため、ことりさんは「承」として、時生さんとの別れのシーンを書きました。
凛子先生の言葉を思い出しながら、「小説は書いただけでは小説ではない。読まれて初めて小説になるのだ」との考えを胸に、ことりさんは書き上げた「承」を涼介さんに読ませることを決意します。すると、涼介さんから「会いたい」という連絡がありました。夜も遅かったですが、涼介さんがすぐそこまで来ていると聞き、ことりさんは会いに行きます。
涼介さんは、目の病気が悪化しており、このままでは失明する恐れがあるため、治療のためにアメリカに渡ることを決めたと告げました。ことりさんは、先日の朗読で涼介さんの声に魅了されたことを告白し、アメリカでの手術が成功したら、涼介さんと一緒に王寺町に行く約束をしました。王寺町は涼介さんが少年時代を過ごした町です。ことりさんは涼介さんの頬にキスをしました。
土曜日を利用して、ことりさんは大阪へ向かいます。王寺町を訪れ、雪丸ロードを歩きました。達磨寺で「涼介さんの目が治りますように」と願いを書いた絵馬を購入し、旧家の谷邸を見学した後、駅に戻ろうとしましたが、道に迷ってしまいました。
そのときに見つけたのが「森の庭」というカフェでした。カフェでおいしいスイーツを楽しんだことりさんは、ぜひとも涼介さんと一緒にここに来たいと思いました。帰宅後、「転」を書き上げたことりさんは、翌日大学に行きます。
しかし、涼介さんは大学に現れません。凛子先生を通じて送られてきた手紙によると、急遽手術が決まり、アメリカに行くことになったそうです。ことりさんは講義を放り出して空港へ向かいます。創作講座の単位を落としても構わない、自分の人生を大切にするためには今、涼介さんに会いに行かなければならないと思ったからです。
アメリカでの手術が成功し、涼介さんは王寺町の西にある明神山の頂上でことりさんを待っていました。ことりさんは一年ぶりに涼介さんと再会します。実は、以前、成田空港に行った際に、飛行機を間違えて涼介さんに会えなかったことがありました。
ようやく涼介さんと再会したことりさんは、自分の恋心にしっかりと目を向けることができました。涼介さんもまた、ことりさんとの再会を心から喜び、二人は新たな一歩を踏み出すことを決意します。
「ラストは初めから決まっていた」の感想・レビュー
「ラストは初めから決まっていた」は、岡山大学文学部の堂島ことりさんが主人公の感動的な物語です。物語は、ことりさんが失恋のショックから立ち直る過程を描いています。彼女は、アメリカ在住の作家・流山凛子さんが講師を務める小説創作の講座に参加し、自分の体験をもとにした恋愛小説を書くことになります。
講座には、経済学部の熊野涼介さんも参加しており、彼はことりさんの元彼・真壁時生さんの友人です。涼介さんは、自分の過去のエピソードを作品に書き、ことりさんに強い影響を与えます。そのため、ことりさんは涼介さんの朗読や作品に感銘を受け、彼に対する感情が変化していきます。
物語の中で、ことりさんは涼介さんとの旅行を約束し、彼の目の病気を治すために一緒に王寺町に行くことを決意します。しかし、涼介さんがアメリカでの手術を受けるために急遽渡米することが決まり、ことりさんは彼に会うために空港へ向かいます。物語のクライマックスでは、一年ぶりに涼介さんと再会し、彼女の心の成長と感情の変化が描かれます。
この物語は、失恋からの立ち直りや、自分の感情に正直に向き合うことの大切さを教えてくれます。また、涼介さんとの約束と再会のシーンは、とても感動的で心に残ります。
まとめ:「ラストは初めから決まっていた」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 主人公・堂島ことりが失恋から再起する物語である
- 物語の舞台は岡山大学の文学部である
- 流山凛子が小説創作講座の講師を務める
- ことりは自分の体験を基に恋愛小説を書く宿題が出される
- 経済学部の熊野涼介が講座に参加する
- 涼介がことりの失恋に関わる内容を書いている
- ことりは涼介の朗読に感銘を受ける
- ことりは涼介と王寺町への旅行を約束する
- 涼介が目の病気でアメリカに渡ることが決まる
- 物語のクライマックスは涼介との再会である