「ウィーン近郊」は、京都在住のイラストレーター西山奈緒が、ウィーンで自殺した兄・西山勇介の遺品整理と葬儀のために渡航する物語です。
奈緒は兄の死を知り、ウィーンでの生活や手続きに苦労しながら、兄の最後の時を追います。彼女は、亡き兄とその同居人・平山ユリとの関係、そして兄の精神的な苦悩に向き合いながら、複雑な葬儀と相続の問題を乗り越えていきます。
本記事では、物語の詳細なあらすじと重要なポイントをネタバレを含めて紹介します。
- 西山奈緒がウィーンで自殺した兄、西山勇介の遺品整理と葬儀を行う物語
- 勇介の同居人・平山ユリの死と、それに続く勇介の精神的苦悩について
- 奈緒がウィーンでの生活や手続きに苦労する様子
- 勇介の葬儀と相続問題に直面する奈緒の奮闘
- 物語の詳細なあらすじと重要なポイントのネタバレ
「ウィーン近郊」の超あらすじ(ネタバレあり)
西山奈緒は京都で赤ん坊の洋を育てながら、イラストレーターとして仕事をしています。彼女の両親はすでに亡くなり、唯一の兄・西山勇介はウィーンで長い間暮らしていました。勇介には、ウィーンで大使館に勤めていた頃に知り合った26歳年上の同居人、平山ユリがいましたが、昨年、ユリさんはガンで亡くなりました。
勇介はユリさんの死によって深い孤独感に襲われ、精神的に不安定になっていました。ウィーンでは、日本語カトリック教会の司牧補佐・高木邦子や、知り合いのカウンセラー・シュリンク千賀子の支援を受けていました。9月初旬、勇介から奈緒に対して、日本行きの飛行機に乗るという連絡がありました。しかし、実際にはその飛行機には乗っていなかったことがわかりました。奈緒は高木邦子の協力を得て、兄を探し出しましたが、その結果、勇介は自宅で自殺しているのが発見されました。
奈緒はウィーンの日本大使館の領事・久保寺光と頻繁に連絡を取り、10日ほど後に赤ん坊の洋を連れてウィーンに渡りました。ウィーンでは、日本とは異なる手続きに苦労しながら、兄の遺体を火葬し、平山ユリの墓に合葬することになりました。
ウィーン大使館の領事・久保寺光は、西山勇介の家族関係について報告書をまとめています。久保寺は来年の転任が決まっており、新しい領事がわかりやすいように、勇介の家族に関する詳細をまとめていました。ウィーンでは外国人が亡くなった場合、相続や税金について厳しい規定があり、勇介の住居は次の領事が赴任する頃まで封鎖されたままだろうと考えています。報告書には、奈緒の個人的なこと、すなわち結婚歴や養子縁組、離婚については記載しませんでした。
一方、奈緒は勇介の鍵を預かっていた隣人のホー夫人に協力を頼み、兄の住居に入れてもらいました。9月29日に、部屋で兄の航空券を発見しました。勇介は9月10日に空港に行ったものの、その後引き返し、2日後に遺体が発見されたのです。奈緒はその午後、兄の知人であったロマーナ・バウアーに話を聞きました。ロマーナは、勇介がゴミ屋敷状態だった部屋を教会の人たちと掃除したことや、勇介が電話に出なかったのは安心して眠るためだったのかもしれないと語りました。
9月24日に、西山勇介の棺が火葬炉に送られました。その後、領事・久保寺光が奈緒と話をしました。久保寺のキャリアについても触れましたが、彼の話は勇介の葬儀には直接関係がありませんでした。9月27日に、勇介の遺灰が自宅近くの墓地に埋葬されました。葬儀には、勇介が頼りにしていた日本語カトリック教会の人々や知人たちが集まりました。
奈緒は、葬儀で兄についての挨拶を述べました。兄は子供の頃からアトピー性皮膚炎に苦しみ、ウィーンの乾燥した気候が合っていたこと、ウィーンでは何十年暮らしてもウィーン人とは認めてもらえなかったこと、末期のユリさんが亡くなったことなどについて話しました。葬儀後、兄の職場の信頼できる先輩が、管財人とのやりとりを代行することになりました。奈緒はウィーンを離れる直前の9月29日に、隣人のホー夫人に鍵を開けてもらい、兄の住まいを再訪しました。
9月29日、奈緒はホー夫人に協力を頼み、兄の住まいに入ることができました。管財人から正式に許可を得て、わずか20分の滞在で、兄の航空券を見つけることができました。勇介は9月10日に空港に行ったものの、その後引き返し、10日と11日の晩を自宅で過ごし、12日に首を吊って自殺しました。奈緒はウィーン大使館に連絡し、兄の死を知ったのは、運良く大使館時代の同僚が電話を受けたおかげで、パスポートの取得がスムーズに進みました。
一方、久保寺光は葬儀の日に「アンティゴネ」の芝居を観に行ったことを思い出しました。この芝居では戦場で死んだ兄を妹が埋葬するというストーリーが描かれており、勇介と奈緒の関係に重なると感じました。
年が変わり、翌年の7月、久保寺光は奈緒にメールを送りました。転任する予定だったが、新型コロナウイルスの影響でウィーン大使館に留まっていることを知らせました。メールの中で、母と結婚したオィディプスとその息子、娘のアンティゴネのことを挙げ、彼らの関係が平山ユリ、勇介、奈緒の関係に重なると感じることを書き添えました。
「ウィーン近郊」の感想・レビュー
「ウィーン近郊」は、西山奈緒がウィーンで自殺した兄・西山勇介の遺品整理と葬儀を行う物語です。奈緒がこの物語で直面するのは、異国での生活や手続きの困難さだけでなく、兄の死による深い感情的な葛藤です。物語の中で、奈緒はウィーンの日本大使館の領事、久保寺光と連絡を取りながら、勇介の遺体を火葬し、平山ユリの墓に合葬する手続きを進めます。
物語は、勇介の死の背景や、その後の奈緒の奮闘を詳しく描いています。勇介が自殺する前に空港に行ったものの、何かの理由で引き返し、自宅で命を絶ったことが明らかになります。奈緒は、兄の自殺の原因やその精神的な苦悩を探る中で、平山ユリという重要な人物の存在にも触れます。
また、奈緒は隣人のホー夫人や兄の知人ロマーナ・バウアーといった人物との交流を通じて、兄の最後の様子や彼が抱えていた問題について知ることになります。葬儀の際には、勇介が頼りにしていた日本語カトリック教会の人たちが参列し、奈緒が兄の思い出や自分の感情を語る場面も描かれています。
全体として、「ウィーン近郊」は、家族の死という重大な出来事を通じて、異国での生活や感情の整理をする奈緒の姿を感動的に描いています。物語の中で、奈緒が直面する困難や心の葛藤、そしてそれを乗り越えていく過程が深く掘り下げられています。
まとめ:「ウィーン近郊」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 西山奈緒が京都からウィーンへ渡る理由は、兄・勇介の自殺による遺品整理と葬儀である
- 勇介はウィーンで二十六歳年上の同居人、平山ユリを失って孤独を感じていた
- 奈緒はウィーンの日本大使館の領事、久保寺光と連絡を取りながら行動する
- 勇介が自殺する前、空港に行ったが引き返し、自宅で命を絶った
- 奈緒は兄の遺体を火葬し、平山ユリの墓に合葬する手続きを進める
- 大使館の領事は勇介の家族関係について詳細な報告書を作成している
- 奈緒は兄の鍵を預かっていた隣人・ホー夫人に助けられる
- 勇介の知人、ロマーナ・バウアーから兄の最後の様子を聞き取る
- 勇介の葬儀には、彼が頼りにしていた教会の人たちが参列した
- 久保寺光は、勇介の葬儀の日に観た芝居と自らの経験を重ねて考える