『ジョニ黒』は、小学四年生の坂本アキラが主人公の物語です。
横浜の巴町を舞台に、母親の恋人である日出男や友人の守川茂雄(モリシゲ)との不思議な日常が描かれます。日出男の怪しげな計画や、父親との過去、モリシゲとの別れなどが絡み合い、夏休みの終わりに向かって物語は進展します。アキラは成長しつつ、複雑な人間関係の中で自身の居場所を見つけていきます。
結末には、驚きの展開が待ち受けています。
- 主人公アキラの日常とその周囲の人物
- 日出男の怪しげな計画とその影響
- アキラの父親との過去の出来事
- モリシゲとの友情と別れ
- 物語の進展と驚きの結末
「ジョニ黒」の超あらすじ(ネタバレあり)
第1章: 〈俺〉とモリシゲと日出男の出会い
僕の名前は坂本アキラ、横浜の巴町に住んでいる小学四年生です。ある夏の暑い日、僕は友だち五人と一緒に遊んでいました。そのうち三人は中学受験の勉強があったので、早めに帰っていきました。最後に残ったのは、守川茂雄、通称モリシゲ。彼は僕の家の近所に住んでいる友だちです。
僕たちは一緒に家に帰ることにしました。家に着くと、僕はモリシゲと別れて自宅に入りました。庭に入ると、母親の坂本マチ子が最近付き合い始めた恋人、日出男がたき火をしているのが見えました。母のマチ子は巴町の文房具店で働いていて、昼食を作るために一旦帰ってきたところでした。マチ子は日出男に「今日は外で食べてきて」と言い、お金を渡しました。
その後、日出男は僕を連れて外に出かけることにしました。途中でモリシゲとも合流し、僕たちはスナック「美奈登」に向かいました。日出男はこの店の鍵を持っていて、勝手に店を開け、中でナポリタンを作ってくれました。僕たちにナポリタンをふるまった後、日出男は「ジョニー・ウォーカー・ブラック」(ジョニ黒)というウイスキーをガブガブ飲みました。そして、証拠を隠すためにジョニ黒の瓶に「ジョニー・ウォーカー・レッド」(ジョニ赤)を継ぎ足しました。
別の日、日出男は外から電話してきて、僕とモリシゲ、それから彼が飼っているシェパード犬のヤマトと一緒に巴町公園に来るようにと伝えてきました。
第2章: 父の思い出と不穏な計画
巴町公園に行くと、日出男が「エリ」という名前のメス犬を連れてきました。日出男はエリが父親の特徴を持った子犬を産む性質を持っていると言いました。そこで彼は、モリシゲの家で飼われているシェパードのヤマトと、このエリを交配させ、シェパードに似た子犬を産ませて、それを売ることでお金を稼ごうと考えたのです。
次の日曜日、僕はばーちゃんに連れられて、教会のミサに参加しました。そこで神父さんが、自分の息子を生贄に差し出したアブラハムの話をしてくれました。ミサが終わると、僕は溝口さんという、ミッション系の女子校に通う帰国子女と二人になりました。彼女は僕に優しく接してくれました。そこで僕は、今まで誰にも話したことのない秘密を彼女に打ち明けました。
それは四年前のことです。当時、僕は母と別居中の父と三人で海に出かけました。そこで僕は海に溺れかけました。その時、父は必死になって僕を助けようとしましたが、僕の記憶はその後途絶えてしまいます。父はその後、いまだに行方不明のままです。この話を聞いた溝口さんは僕を慰めてくれ、自分のスクールリングを僕にくれました。
また話が変わりますが、夏休みの自由研究として、僕は川の漂流物を記録することにしました。川のそばで調査をしていたとき、なんとバラバラになった死体が流れてくるのを見つけました。僕はすぐに町内を巡回していた町会長に知らせました。ちなみに、町会長というのはモリシゲのおじいさんで、いつも犬のヤマトを連れて町内を巡回しています。
第3章: モリシゲと日出男の別れ
バラバラ死体の発見者として、町会長が名乗り出ました。彼はテレビの取材を受け、自分の推理を堂々と話しました。しかし、そこにモリシゲが突然乱入し、カメラの前で勝手なことを話し始め、現場は混乱してしまいました。
その後、日出男は僕たちの家に帰ってくることが少なくなりました。母のマチ子には「スナック美奈登で働いている」と言っていましたが、実際には違いました。ある日、僕がモリシゲと一緒に市民プールに行くと、そこに日出男が現れました。どうやら彼は、マチ子に婚約指輪を買うために、まじめに働いていたようなのです。
しかし、僕は浮かれている日出男に、母マチ子に新しい恋人ができたことを告げるしかありませんでした。それを聞いた日出男はカラ元気を出し、僕を家まで送ってくれましたが、その後、去って行きました。
僕はその後、スナック美奈登に行ってみました。そこで出迎えてくれたのはおかまのマダムで、日出男はこの店で働いていなかったことを教えてくれました。また、日出男の居場所についても「知っていても教えない」と告げられました。
一方、モリシゲからは突然の引っ越しを知らされました。彼の母親からの勧めで、芸能プロダクションに入ることになったのです。引っ越したモリシゲが初めて出演したテレビ番組を見たとき、僕は驚きました。モリシゲはでっちあげの父子ネタで番組に出演していたのです。放送後、モリシゲから電話がかかってきましたが、彼は現実離れした話ばかりして、僕は何も言えず、ただ沈黙するしかありませんでした。
第4章: 夏の終わりと日出男の足跡
夏休みの最終日、僕は千円札を握りしめ、日出男の行方を追うために伊勢崎町へ向かいました。自分で描いた日出男の似顔絵を持って、町の人々に「この人を知りませんか?」と尋ねて回りました。その結果、あるおばさんが僕をバラック小屋に連れていってくれました。
そこには日出男に似たおじいさんがいて、彼が日出男のことを話してくれました。そのおじいさんは、ニセモノ作りの世界でちょっとした名人として知られている人物でした。おじいさんは、日出男が真面目に仕事をすることを願って育てたと言います。
おじいさんと別れた後、僕は以前声をかけられた女性を訪ねてまわりました。そこでわかったのは、その女性は水商売をしていた人で、先月僕が見つけたバラバラ死体が彼女であったということでした。
第5章: 新たな出発と〈俺〉の成長
巴町に戻ると、モリシゲのおじいさんに会いました。彼は以前の元気がなく、すっかり憔悴してしまい、別人のようでした。おじいさんは僕に町内のパトロールを頼み、腕章と胴巻を手渡してくれました。僕はエリという犬を連れて町内を巡回しますが、そのときエリが流産していたことがわかりました。エリが産んだ子犬はヤマトの子ではありませんでした。
僕は流産した子犬に「ジョニ黒」という名前をつけてあげました。その後、プラモデル屋に行くと、店長に捕まってしまい、野原に連れて行かれました。そこで店長がラジコン飛行機を操作させてくれました。
こうして僕の夏休みの最後の日は過ぎていきました。家に帰ろうとしたその時、背後から懐かしい男の声が聞こえてきました。その声は、まるで
過去からの呼び声のようで、僕はその声に振り返りました。
「ジョニ黒」の感想・レビュー
『ジョニ黒』は、坂本アキラという小学四年生の少年が主人公で、横浜の巴町という町を舞台にしています。物語の中で、アキラはさまざまな複雑な感情や出来事に直面します。特に印象的なのは、アキラが母親の恋人である日出男と過ごす時間です。日出男は、一見無責任で自由奔放な大人ですが、アキラとの関わりの中で、彼の隠された優しさや弱さが見え隠れします。彼が企てる怪しい計画には驚かされますが、それが物語全体の緊張感を高めています。
また、アキラの友人である守川茂雄、通称モリシゲとの友情も深く描かれています。モリシゲが突然引っ越すことになり、アキラが感じる孤独や戸惑いがリアルに伝わってきます。彼らの関係は、単なる子ども同士の友情ではなく、家族や周囲の大人たちとの関係性を通じて、複雑で深いものとして描かれています。
さらに、アキラの父親が行方不明であるという過去の出来事が、彼の心に大きな影を落としています。アキラが教会で出会った溝口さんに心を開く場面では、彼の孤独や不安が痛いほど伝わってきました。溝口さんがアキラを慰め、彼に寄り添う姿勢には心が温まります。
物語全体を通じて、アキラの成長が描かれており、特に夏休みの終わりに向けて、彼が少しずつ大人になっていく過程が感動的です。最後に、彼が感じる懐かしい男の声は、物語の締めくくりにふさわしい余韻を残し、読者にさまざまな思いを抱かせます。
『ジョニ黒』は、日常の中に潜む小さなドラマを巧みに描き出し、読者を引き込む力を持った作品です。坂本アキラの目を通して、家族や友人、大人たちとの関係を見つめ直すことができる、非常に深い物語だと感じました。
まとめ:「ジョニ黒」の超あらすじ(ネタバレあり)
上記をまとめます。
- 坂本アキラが主人公である
- 物語の舞台は横浜の巴町である
- アキラの母親には恋人の日出男がいる
- 日出男は怪しい計画を企てている
- アキラには友人の守川茂雄(モリシゲ)がいる
- モリシゲは突然引っ越すことになる
- アキラの父親は行方不明になっている
- 夏休みの出来事が物語の中心である
- アキラは成長し、変化を経験する
- 物語の終盤には驚きの展開がある