『熱帯安楽椅子』は、山田詠美による作品で、創作活動に行き詰まった主人公サクラが、失恋の痛みを癒すためにバリ島を訪れるところから物語が始まります。
異国の地で新たな出会いや文化、恋愛、そして悲劇を経験するサクラの心の旅路が描かれています。この記事では、『熱帯安楽椅子』の物語を第1章から第5章まで、詳しくかつネタバレを含めて紹介します。
- 主人公サクラの心の変化と成長
- バリ島での新たな出会いと恋愛
- ガルンガンのお祭りの様子と文化
- トニとの出会いと悲劇的な結末
- サクラが経験した異国での冒険と別れ
熱帯安楽椅子(山田詠美)の超あらすじとネタバレ
第1章:出発と到着
私は東京に住んでいるサクラと言います。最近、創作活動がうまくいかなくて、とても落ち込んでいました。それに加えて、恋人と別れたばかりで、心も疲れていました。そんな時、友達のタケシが「海外で休養してみたらどうだい?」と言ってくれました。
タケシの助けを借りて、バリ島行きの航空チケットを取りました。バリ島はインドネシアにある美しい島で、デンパサールというリゾート地に行くことにしました。飛行機はとても快適で、私は少しだけ気分が良くなりました。
デンパサールの空港に到着すると、たくさんのタクシー運転手が私の周りに集まってきました。みんな日本人観光客から高額なチップをもらおうとしているようでした。私はその中から、最も流暢な英語を話す青年を選びました。彼の名前はアグスと言います。
アグスのタクシーでホテルに向かいました。彼はとても親切で、ホテルの場所もよく知っていました。ホテルに着くと、私はすぐに部屋のベッドに倒れ込みました。久しぶりに、時間を気にせずぐっすり眠ることができました。
第2章:新たな出会い
翌朝、私はホテルのレストランで朝食をとることにしました。レストランにはたくさんの種類の料理が並んでいて、どれも美味しそうでした。注文をしようとすると、ウェイターが現れました。彼の名前はワヤンと言います。ワヤンは英語があまり得意ではないようでした。
私は目玉焼きを注文しましたが、ワヤンは生卵を持ってきました。その時、私たちは笑い合い、少しずつ親しくなりました。それから、毎日朝食の時間になると、ワヤンが私の席まで駆け寄ってきて、椅子を引いてくれるようになりました。
ある朝、私は勇気を出してワヤンを海辺のデートに誘いました。彼は驚いた様子でしたが、すぐに笑顔になって「はい、行きましょう」と答えてくれました。
第3章:密かな関係
私とワヤンは夜の砂浜でデートを楽しみました。星がきれいに輝いていて、波の音が心地よかったです。その時、ふと遠くを見ると、一人の少年が木立の陰から私たちを見つめていました。私は少し驚きましたが、そのまま楽しい時間を過ごしました。
数日後、ワヤンと一緒にオートバイで丘の上にあるコテージに行きました。そこにはユージンというオーストラリア人が住んでいて、プロのサーファーとして活躍しています。ユージンにはトニという弟がいて、彼が私たちを見ていた少年でした。
トニは耳に障害があり、話しかけても答えることができませんでした。しかし、彼は私たちの関係を理解してくれているようで、いつも笑顔で迎えてくれました。コテージはとても静かで、私たちはそこで楽しい時間を過ごすことができました。
第4章:ガルンガンのお祭り
バリ島では、ガルンガンという大きなお祭りがあります。ガルンガンの日が近づくと、街中が活気に満ち溢れました。ワヤンは私をクロボカン村に連れて行ってくれました。そこにはイブという女性が経営する雑貨屋がありました。
イブは私が祭りに参加しやすいように、バティク染めの伝統的な衣装を用意してくれました。ガルンガンの日は外国人観光客には関係がないため、ホテルも暇で、ワヤンも簡単に休みを取ることができました。
ワヤンは普段のラフな格好ではなく、ヒンズー教徒の正装であるサルンを腰に巻いていました。彼はとても神妙な様子でした。中央広場では、ドラの音に合わせて踊るバロンという聖獣が見られました。これは日本で言えば獅子舞のようなものです。
子供たちは学校が休みになるため、至るところではしゃいで走り回っていました。私はユージンとトニを探しましたが、彼らはお祭りには参加せず、サーフィンに夢中でした。
第5章:別れと帰国
ガルンガンが過ぎて数日後、ユージンが私の部屋を訪れました。彼は悲しそうな顔をして、トニがサーフィン中に事故で亡くなったことを告げました。大きな波に呑まれてしまったという不運な事故でした。ユージンは涙ながらにその詳細を語りました。
トニは耳の障害から波の音もサーファー仲間からの警告も聞こえず、悪天候の中でも無茶をしていたようです。ワヤンはルームサービスを装って私の客室に来て、茫然自失の私をしっかりと抱きしめてくれました。
帰りの飛行機の中で、私はいつも以上に白ワインを飲みすぎてしまいました。夜のフライトは私を心地よく酔わせ、自然と涙がこぼれました。そんな私に声をかけてくれたのは、ジャカルタから乗り込んできた男性です。
彼は「どうなさったのですか?」と優しく問いかけてくれました。私は「人が亡くなったのです」と答えましたが、いつしかトニが人間ではなく人魚のように思えてきました。涙を流しながら、私はトニのことを思い出していました。
熱帯安楽椅子(山田詠美)の感想・レビュー
『熱帯安楽椅子』は、山田詠美さんの作品で、主人公のサクラがバリ島で新たな自分を見つけるまでの物語です。創作活動に行き詰まり、恋人と別れてしまったサクラは、友人のタケシの勧めでバリ島に行きます。ここでの出来事が、サクラの心に大きな変化をもたらします。
まず、デンパサール空港で出会った流暢な英語を話すタクシー運転手のアグスとのやり取りが印象的でした。彼の親切さに触れたサクラは、少しずつ心を開いていきます。ホテルに着いたサクラが久しぶりにぐっすり眠れるシーンからも、彼女の疲れた心が少しずつ癒されていく様子が伝わってきます。
次に、ホテルのレストランで出会ったウェイターのワヤンとの交流が物語の大きな軸となります。目玉焼きを生卵と間違えて持ってきたことから始まる二人の関係は、毎日のように親しくなっていきます。ワヤンの純粋で優しい性格に、サクラも心を開いていきます。サクラがワヤンを海辺のデートに誘う場面では、二人の距離が一気に縮まる瞬間が描かれています。
さらに、ワヤンとのデート中に遠くから見つめていた少年トニとの出会いも重要です。トニは耳に障害がありましたが、兄のユージンとともにサーフィンを楽しんでいました。サクラとワヤンがトニやユージンと過ごす時間は、サクラにとって特別なものとなります。
ガルンガンのお祭りのシーンでは、バリ島の文化や伝統が色鮮やかに描かれています。サクラがイブの雑貨屋でバティク染めの衣装を着て参加する場面は、異文化交流の楽しさと美しさを感じさせます。ワヤンがヒンズー教徒の正装であるサルンを着て、神妙な様子でお祭りに参加する姿も印象的です。
最後に、トニがサーフィン中に事故で亡くなるという悲劇が訪れます。ユージンがサクラにその知らせを伝える場面は、非常に感動的で胸が痛くなりました。サクラが帰りの飛行機で涙を流しながらトニのことを思い出すシーンは、彼女の心の成長と悲しみが強く伝わってきます。
全体を通して、『熱帯安楽椅子』はサクラの心の変化と成長を描いた素晴らしい作品です。異国の地での出会いや別れが、彼女にとって大きな意味を持ちます。山田詠美さんの繊細な描写と美しい言葉が、この物語をさらに魅力的にしています。
まとめ:熱帯安楽椅子(山田詠美)の超あらすじとネタバレ
上記をまとめます。
- サクラが創作活動と失恋で悩んでいる
- タケシの勧めでバリ島に行く
- デンパサール空港で流暢な英語を話す青年アグスを選ぶ
- ホテルでぐっすり眠る
- レストランでワヤンと出会う
- サクラとワヤンが親しくなる
- サクラがワヤンをデートに誘う
- ワヤンと砂浜で過ごす
- ガルンガンのお祭りに参加する
- トニがサーフィン中に事故で亡くなる