「パレード(吉田修一)」は、都会での共同生活を描いた小説で、その緻密なストーリーテリングと驚きの展開が話題です。
物語は、九州の田舎町から上京した杉本良介を中心に展開し、ルームシェアをする仲間たちとの日常や、それぞれの抱える秘密、そして不可解な事件が絡み合います。
吉田修一の巧みな描写とキャラクターの深掘りによって、読者は次第に物語に引き込まれていきます。この小説の魅力と衝撃的な結末を、ネタバレありで詳しく紹介します。
- 主人公・杉本良介の上京と新生活の始まり
- 大垣内琴美の東京での生活と過去の恋人との関係
- 小窪サトルの謎と彼の登場による生活の変化
- 隣室の402号室に関する疑惑と占いの館の真相
- 伊原直輝の暴力行為とその後の展開
パレード(吉田修一)の超あらすじとネタバレ
第1章: 上京と新生活
杉本良介は18年間、九州の田舎町で過ごしました。彼の両親は寿司屋を経営しており、良介もその手伝いをしながら高校生活を送りました。しかし、彼はもっと広い世界を見たいと考え、東京にある市ヶ谷の私立大学に進学することを決意しました。両親を説得するのは簡単ではありませんでしたが、最終的には彼の熱意が伝わり、上京することができました。
東京での生活を始めるにあたり、良介は手ごろな価格の物件を探していました。そんなとき、大学の先輩である伊原直輝がルームシェアを提案してきました。直輝は千歳烏山にある2LDKのマンションに住んでおり、8畳の和室を良介と一緒に使うことを提案しました。直輝の提案を受け入れ、良介は彼と一緒に住むことに決めました。
新生活を始めた良介は、下北沢のメキシコ料理屋でアルバイトを始めました。大学のサークル活動や友達との旅行も楽しみながら、マイペースな大学生活を送っていました。しかし、彼には気掛かりなことが二つありました。ひとつは、お隣の402号室に多くの人が出入りしていることです。もうひとつは、近所で女性が見知らぬ男に襲われる事件が続いていることでした。
第2章: 琴美の東京生
大垣内琴美が東京に来たのは、短大生の頃に付き合っていた丸山友彦に会うためです。彼女はトラックをヒッチハイクして築地までたどり着き、東京で唯一の友人である相馬未来に電話をかけました。未来は快く琴美を迎え入れ、二人で10畳の洋室をシェアすることになりました。
丸山友彦は芸能事務所にスカウトされ、東京で売り出し中の若手俳優としてテレビドラマに出演し始めました。しかし、彼の多忙なスケジュールのため、琴美と会う時間がなかなか取れませんでした。ある日、琴美がいつものように部屋で友彦からの連絡を待っていると、見知らぬ男の子がバスルームから出てきました。彼は小窪サトルと名乗り、琴美と意気投合しました。二人はパチンコ店に行ったり、アイスクリームを食べたりして楽しみましたが、最終的には駅前で別れました。
久しぶりに友彦と会えた琴美は、帰宅後にサトルについて良介や直輝に尋ねました。しかし、彼らもサトルについては何も知りませんでした。
第3章: サトルの謎
実はサトルを連れ込んだのは、前夜に新宿二丁目で泥酔していた未来でした。未来は酔った勢いでサトルをマンションに連れてきてから、約2週間が経ちました。サトルはすっかり打ち解け、皆と寝食を共にしていましたが、名前と「夜の仕事」をしていること以外は多くを語りませんでした。
直輝はサトルに対してお節介を焼き、映画配給会社でのアルバイトを紹介しました。良介もまた、大検合格のための個人教授を申し出て、問題集を買ってきました。未来が勤め先の雑貨店から帰ってくると、良介と琴美が隣室の402号室について話していました。良介は部屋の中で違法行為が行われているのではないかと疑い、自らがお客となって潜入捜査を試みました。
しかし、ふたりの予想は大きく外れました。402号室は売春宿ではなく、評判の良い占いの館でした。
第4章: 占いと真実
占いのために個人データの記入を求められた良介は、咄嗟に直輝の名前と生年月日を書き込みました。20000円の料金と引き換えに占い師が出した答えは、「あなたは強く変化を求め、世界と闘っている」でした。良介はこの答えに驚きましたが、それ以上のことはわかりませんでした。
一方、伊原直輝が初めて見知らぬ女性に対して暴力を振るった夜、良介と琴美は呑気に伊豆高原への旅行計画を立てていました。2度目の夜、サトルが転がり込んできて5人での新しい生活が始まりました。3度目の夜、未来が泥酔して帰宅したときには、リビングで彼女を介抱しました。4度目の夜から、直輝は一睡もできなくなりました。5度目の夜、ジョギング用のジャージ姿で家を出るところを良介と琴美に目撃され、ふたりは迷惑そうな顔をしました。
第5章: 衝突とその後
ある夜、直輝は赤い傘をさしている女性を見つけました。その場所は高速道路の高架下にある中央分離帯でした。直輝は足元のコンクリート片を握りしめ、ターゲットの口を塞いで顔面を殴りました。しかし、突如として背後からサトルに手首を掴まれ、駐車場に留めてあった良介の車に押し込まれました。
サトルの話では、未来も良介も琴美も薄々と通り魔の正体に感づいているようですが、誰ひとり通報するつもりはありませんでした。マンションに帰った直輝は、テレビの前に座って仲良く談笑する4人を眺めながら立ち尽くしていました。
パレード(吉田修一)の感想・レビュー
吉田修一の小説「パレード」は、都会での共同生活を描いた魅力的な物語です。主人公の杉本良介が、九州の田舎町から上京し、新しい生活を始めるところから物語はスタートします。彼が市ヶ谷の私立大学に進学し、ルームシェアを提案してきた大学の先輩・伊原直輝との共同生活が描かれます。良介の新生活は、下北沢のメキシコ料理屋でのアルバイトやサークル活動、そして友達との旅行など、さまざまな日常の出来事に彩られています。
一方、大垣内琴美は短大生の頃に付き合っていた丸山友彦に会うために上京します。彼女が唯一の友人である相馬未来とシェアする10畳の洋室での生活は、友彦との関係や新しい出会いに満ちています。未来が酔っぱらって連れてきた少年・小窪サトルとの交流も、琴美の生活に新たな彩りを加えます。
物語の中で特に印象的なのは、良介と直輝の隣室である402号室にまつわる謎です。多くの人が出入りするその部屋に対する疑念が、良介の潜入捜査へとつながります。しかし、占いの館だったという真相が明かされると、予想外の展開に驚かされます。占い師に言われた「あなたは強く変化を求め、世界と闘っている」という言葉も印象的です。
物語の後半では、直輝が初めて見知らぬ女性に暴力を振るうシーンがあります。これは読者に大きな衝撃を与えます。直輝が暴力を振るった理由や、その後の彼の心情描写は緻密で、物語の緊張感を高めています。最終的に、サトルや未来、良介、琴美が直輝の行動に気づきながらも、誰も通報しないという結末には複雑な感情が残ります。
全体として、「パレード」は登場人物たちの内面の葛藤や人間関係の複雑さを巧みに描いた作品です。吉田修一の細やかな描写と意外な展開が、読者を最後まで引きつけます。この物語は、都会での共同生活の裏に潜む人間の本性や、予測不可能な出来事に対する人々の反応を見事に描き出しています。
まとめ:パレード(吉田修一)の超あらすじとネタバレ
上記をまとめます。
- 杉本良介が九州の田舎町から上京する決意をする
- 両親の反対を押し切って東京の私立大学に進学する
- 大学の先輩である伊原直輝とルームシェアを始める
- 下北沢のメキシコ料理屋でアルバイトをする
- 隣の402号室に多くの人が出入りしていることに気付く
- 近所で女性が見知らぬ男に襲われる事件が続く
- 大垣内琴美が元恋人の丸山友彦に会うために上京する
- 小窪サトルという少年が未来と一緒に生活を始める
- 良介が隣の402号室の実態を探るため潜入捜査を試みる
- 直輝が女性に暴力を振るい、その後の衝突が描かれる